ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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規制緩和に続く政策の方向性

 中央教育審議会答申「我が国における高等教育の将来像」は、“高等教育の危機は社会の危機”と警鐘を鳴らすとともに、高等教育政策を一大転換すべきであると指摘した。さらに、「高等教育計画の策定と各種規制の時代」は終焉し、「将来像の提示と政策誘導の時代」が始まったと明示した。
 我が国の高等教育政策は、1975年から2000年について策定された高等教育計画に基づいて展開されてきた。大学等の新設・増設については抑制的な対応であったが、第2次ベビーブームによる18歳人口の急増期においては、臨時的定員が配置され、受験戦争の緩和が図られた。しかしながら、大学全入時代においては、こうした需給調整に基づく高等教育計画に依拠する高等教育政策は実効性を失わざるをえない。
 大学等の設置については、1990年代から規制が徐々に緩和され、2003年度には準則主義が導入されるに至った。既存大学における学部・学科の新設については、法令によって規定されている条件を満たせば、届け出で済む。「事前規制から事後チェックへ」を実質化するための大幅な規制緩和であった。高等教育政策は一大転換したといえよう。
 これからの高等教育政策は「将来像の提示と政策誘導の時代」に向かう。その際、高等教育の主体に視点を置いた政策策定が重要である。高等教育は知識基盤社会の持続的発展を実現する牽引車であり、高等教育の主体は個々の高等教育機関と学習者個々人に他ならない。しかも、教育に対する社会的ニーズは、加速的に多様化と高度化に向かっている。さらにこれらの変化がきわめて速い。こうした時代の変化に的確に呼応するとともに、これら高等教育の主体者の自律的選択にふさわしい将来像を提示することこそ、高等教育政策の責務であろう。



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