ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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設置審査で浮上した課題

 規制が大幅に緩和されたといっても、依然として大学等の設置は認可事項である。したがって、設置認可の審査は、現行法を根拠とせざるをえない。しかしながら、高等教育機関の多様化は著しく、もはや、ひと言で大学を語ることは難しい。設置認可の申請にも多様化が色濃く反映している。特に大学への新規参入を企図する設置主体の申請には、「大学とは何か」という基本に関わる課題が含まれている。これらはいずれも「大学の質保証」を損ないかねないと危惧される。そこで、大学設置・学校法人審議会として課題と考えている主なものを紹介しておきたい。
 学校教育法第52条及び第65条による「大学」「大学院」「専門職大学院」の目的規定は、次の通りである。
「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」「大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする」「大学院のうち学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする」
 これらに基づき、設置審査で議論が行われた課題のうち主なものを列挙しておく。
(1)教育目的・内容が資格取得や技能の習得に特化している「大学」
(2)専門学校や学部とのレベルの相違が不明確な「専門職大学院」
(3)報酬や担当時数が過小である「専任教員」
(4)研究業績を有しない「実務家教員」が大部分を占めるような「大学」
(5)研究室が狭隘で、教員研究費が過小など、研究環境に問題がある場合
 以上は、大学・大学院・専門職大学院の基本的機能である「教育研究」に深く関わっている。「教員の活動的な研究なしに、質の高い大学教育を行えるのか」「人間形成教育なしに、質の高い大学教育を行えるのか」などの問題である。
 怒涛のごとく押し寄せる規制緩和の真っ只中、大学設置・学校法人審議会はきわめて制約的な立場で、「高等教育の質」の低下を必死に防ぎ止める努力をしている。言うまでもないが、我が国が急ぐべきことは、「世界的通用性のある質の高い高等教育づくり」である。



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