ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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カリキュラムと教員に意見

 設置審査では、「起業」というコンセプトと学問としての教育・研究をどう調和させるかが最大の焦点となった。その観点から、カリキュラムの内容と教員の人選について意見が付いた。
 光産業創成大学院では、起業に必要とされる基礎知識として、会計やマーケティング、経営などをきちんと教育する必要があると考え、これらを網羅的に扱う「起業経営特論」(2単位)を設けるカリキュラムで申請した。しかもその中で、それぞれの分野の実践的なスキルが修得できる内容にし、起業という実学志向のコンセプトを鮮明にした。内容について、新屋事務局長は「入学後に会社を設立し、実際に技術を商品化していくことが求められるため、『起業経営特論』では実際の経営に役立つ内容を盛り込んだ」と説明する。
 しかし、設置審からは、「『起業』のみが重視されている。目的とする人材を育成するには社会科学分野の大学院の講義が必要である」との見解が示された。そのポイントは2点あり、一つは、「経営学総論」「会計学」「企業金融論」「マーケティング」を、独立した必修科目として教えるべきという指摘だった。もう一つは、スキルとは切り離して、それぞれの分野を学問的に体系立てて教えるべきというものだ。
 これを受け光産業創成大学院では、新たに「起業経営特論1」(経営学総論・マーケティング論)、「起業経営特論2」(会計学・企業金融論)の2科目を設定し、各2単位の必修とした。当初考えていた実践的な内容は、「起業経営特論3」として残したが、履修負担が増大することを懸念し選択科目にした。新屋事務局長は「入学者は修士課程の修了者で、企業などである程度の経験を積んだ人が多い。そういう人は実務を通じて会計などの知識を修得しているはずで、一律に必修科目として課す必要があるのか、との思いは個人的にはある」という。
 また教員については、ある科目の担当者が、大学院の教員としての実績が不十分だとの指摘を受け、予定者を変更した上で再審査に臨んだ。
 設置審との対話の中で大きなテーマとなったのは、起業家の育成という「新しい大学院の構想」をどう実現するかという点である。新屋事務局長が中心になって頻繁に文科省の担当窓口に足を運び、様々なアドバイスを受けた上で申請にこぎ着けた。それでも「こちらの説明が不十分だったこともあり、構想を正確に理解してもらえたかどうか不安な面はある」という。
 設置審に対しては、「目的とする教育を実現するためにも、専門委員と設置者側がより理解を深め合う機会が欲しい」と要望する。



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