ベネッセ教育総合研究所
高校改革のいま
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定点観測を通して効果を検証する仕組みが重要

 高大連携の取り組みの中で、高校の評価が高いものの一つに、大学の授業の聴講がある。大学の実際の授業を体験することは、進路決定に悩む高校生にとって一番の参考になるからだろう。ただ、どのような授業を聴講するかは生徒の自主性に任せているケースが多い。今後、高校は生徒にどのような教育の機会を与えたいのかをはっきりさせ、その中で大学との連携をどう位置付けるのかを詳細に検討すべきだろう。例えば、高校での学習の一助とするのか、日頃、高校では教わらないことを知る課外授業とするのかによって、受けさせるべき授業は変わってくる。
 また、聴講した授業も高校の卒業単位として認定するのか、認定する場合、誰がどのような形で成績評価をするのかといったことも事前に双方で決めておく必要がある。また一過性の取り組みに終わらせないためには、定点観測を通してその効果について常に検証するしくみを構築することが重要だ。
 高校は大学の授業の聴講に取り組もうとすると、「時間的課題」「距離的課題」「金銭的課題」の三つの壁にぶつかる。
 高校生が大学の授業を受けられるのは、高校の授業や部活動が終わってからである。そのことを大学に理解させ、開放する授業の時間帯を考慮してもらう必要がある。そうでないと、現実問題として単位制高校以外は大学の授業の聴講はできないことになってしまう。大学側は、一般的な学年制の高校と積極的に連携をするのであれば、夏期休暇中に集中的にセミナーを実施するなどの配慮が必要である。
 また、平日に聴講するには、高校の授業が終わってから移動して間に合うような距離の大学であることが絶対条件となる。まずは距離的に近い高校・大学間でモデルケースをつくり、その後周辺の高校に連携を広げていく努力が必要である。ただし最近はeラーニングを活用した遠隔授業も可能なので、環境さえ整えばこの課題は解消されるだろう。
 国立大学との連携の場合は聴講料を要すなど、費用負担をどうするかといった金銭的課題もある。1年間で1万数千円程度とはいえ、生徒の個人負担が発生する以上、高校として積極的な受講は勧めにくく全体的な取り組みになりにくい。こうした課題の克服には、個々の大学と高校の話し合いだけでは限界がある。近年は、都道府県の教育委員会が環境整備に向けて積極的に支援するケースも増えている。
 高大連携の取り組みで今後さらに重要になるのは、入学前教育であろう。推薦入試やAO入試の定着で、高校3年の11月頃には進学先が決まってしまう高校生が増えている。高校教員にとって、大学入学の半年近くも前に受験勉強から解放された生徒をどう指導すればいいのか、新たな課題が生まれている。
 推薦入試やAO入試の合格者にも、一般入試で挑戦する生徒と同様にセンター試験の受験を促し、その得点を高校3年間の自分の学習成果として確認させる高校もあるが、生徒に徹底することは難しい。大半の生徒は、合格と同時に学習意欲が低下し、入学までの半年間を無為に過ごしてしまうようだ。
 しかし、これでは大学側も学習意欲の乏しい学生を受け入れることになり、導入期教育に大きな支障をきたす。入学前教育を学部教育の入門編として行えば、「教育の連続性」を生み、高校生の学習意欲向上にもつながる。そのために大学側は、どのような内容の入学前教育を課すのか、事前に高校と相談して理解を得ておくことで、双方が協力しやすい体制をつくることができる。


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