ベネッセ教育総合研究所
高校改革のいま
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急速に進む点から線、そして面への展開

 高大連携の具体例をいくつか挙げてみたい。埼玉県立浦和高校では、単位制への移行を機に、00年度から埼玉大学での講義の聴講制度を導入している。大学から半年または通年で34講座(04年度)が開放され、00年度は2、3年生のべ76人が聴講した。生徒には「講義の内容理解よりも、理解しようと努力することに意義がある」と積極的に薦めている。学ぶことの意味を生徒自身に自問自答させ、学問へのより高い興味関心を喚起させることが目標だ。生徒からも「高校で学んでいる内容がどのように発展して大学での学びに繋がっていくのかが理解できた」「経済学部で学ぶには数学の知識が必要なことがわかった」など、前向きな感想ばかりであった。
 現在、浦和高校では東京工業大学のサテライト授業の配信も受けている。これは、全国の高校や高等専門学校を対象に衛星通信で半期の講義を配信するシステムである。浦和高校では、希望する生徒は放課後に「化学第二(量子化学入門)」「基礎生物学A」(03年度)を視聴。わからないことがあれば、メール等で担当教員に質問することも可能だ。
 また、単位制の定時制高校である福岡県立博多青松高校でも、02年度から生徒が近隣の大学や専門学校の授業を聴講できるアドバンスド・スタディ制度を発足させた。生徒は半期または1年間受講し、卒業単位として認定してもらえる。受講した生徒からは、「進路に対する漠然としたイメージが、専門的な分野に触れることによって具体的になり、勉強や進路に対する目標ができた」といった感想も。博多青松高校の宮原清教諭は「学びたい学問が明確になって卒業していく、何よりの証拠だと思います」と話す。
 鳥取県では県教育委員会が中心となり、鳥取大学と県立高校の間で教員を派遣し合って授業を担当する「大学と県立高校教員の相互派遣協定」を結び、双方の教育の充実に役立てている。高校教員は大学で英語、数学、物理、化学、生物の5科目について5月から7月までに各15回の補習授業を行う。一方、大学の教員は県立高校で年間170時間程度の出張授業をする。この場合、県教委は出張授業について各高校からの要望を取りまとめて大学に提示。大学は各学部で検討し、できるだけ希望に沿うように教員を派遣する。
 茨城県内の7大学(茨城大学、県立医療大学、茨城キリスト教大学、常磐大学、つくば国際大学、東京家政学院筑波女子大学、流通経済大学)は、県教育委員会と「高大連携協定」を結んでいる。高校生が大学の授業を聴講するだけでなく、県内の五つの学区ごとに設定した拠点校で、土曜日や夏休みに大学の教員が年間15回程度の特別講座「プレ・カレッジ講座」を開く。受講した生徒には、どちらも「学校外の学修」として高校の単位が与えられる。特別講座のテーマには、「心を探求しよう」「人間と自然のかかわり」「国際社会での日本の将来」「体で感じる本物のサイエンス」などがある。
 このほか岩手県、京都府、広島県などでも、間に教育委員会が入って複数の高校と大学間で似たような高大連携の取り組みが進んでいる。まさに点から線、そして面への展開が急速に進んでいるといえよう。

図表



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