ベネッセ教育総合研究所
特集 学校組織の機能活性化
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年2回の総括が硬直化を防ぐポイント
 取り組みが体系化されたとしても、前年踏襲に陥ると、組織実践の硬直化を招きかねないが、島原高校では取り組みの後に必ず「評価」の視点を織り込むことで、取り組みの硬直化を防いでいる。
 計画→実践→評価→修正のサイクルが硬直化を防ぐ効果を果たしていることは、導入期指導の流れをつぶさに見るとよく分かる(図1)
図1
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年度始めに3泊4日の雲仙合宿研修を中心とした1学期の取り組み内容を学年団で確認。実施後、1学期の成果を踏まえて7月の中旬に一度中間総括を行う。そこで、1学期の取り組みに関する評価を基に「中間まとめ」を作成し、2学期の指導の軌道修正を行う。2学期が終わると導入期指導は完了したものとして、今度は12月末に導入期指導全体の実施状況と成果について最終的な総括が行われ「実施結果のまとめ」が作成される。
 中でも、8月(中間総括)と12月(全体総括)に設けられている2度の総括が、組織実践を硬直化させない重要なポイントになるのは間違いないだろう。
 「総括」と一言で言っても、実は複数回に渡る意見の交換が行われている。7つの目標に付随する指導細目(図2B)の評価担当者には、学年団から2名、分掌から1名が当てられるが、まずそのメンバーにより取り組みに対する評価が行われるのだ。
 評価の観点は、大きく教師の指導自体を評価する「実施状況の評価基準」と、実際に指導がどれだけ効果を上げたのかを評価する「成果の評価基準」の二つで、それぞれA〜Eの5段階評価で行う。指導の在り方は正しかったのか、またその指導が成果として生徒に反映されているのか、因果関係を把握・分析することで各指導細目の具体的な改善策について討議することが可能になるのだ(図2C)
 中間総括の流れは以下の通りだ。担当メンバーが出した中間総括の評価結果は7月の「総括委員会」に提出され、校長や教頭、分掌の副主任で編成された20名程度の委員によって、要求水準に達しているかどうか、すべての指導細目に関する評価結果が検討される。例えば「この項目は去年AだったのがBになっているが、その原因は何か」など評価とその改善策に対する疑問が呈されると、再度担当のメンバー間で具体的な対策が練り直され、8月の職員会議に「中間まとめ」の形で提出される。
 12月の全体総括は、総括委員会により1〜2学期を通した導入期指導全体に対する評価が行われる。プロセスは中間総括とほぼ同様だが、一連の「総括」で見いだされた新たな課題について改善策が練られ、年度中に次年度1学年担任団への申し送り事項を確定していく。1学年主任の相川保彦先生によれば「職員と生徒の名前を入れれば指導が始められるレベルまで前年度に作っておく」のだと言う。
 「取り組みや行事が終わった直後にマニュアルを修正するというのが本校の考え方です。そうすれば、修正したものが次年度に引き継がれますから、毎年取り組みのレベルは上がっていくはずです」
 総括のプロセスを精緻化すると共に、取り組みが終わった時点ですぐにその成果を振り返り、次年度の施策を確定する点が、前年踏襲を排し、効果検証を踏まえた組織実践を向上させる鍵と言える。


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