(2) よくありがちな振り返りを明日に繋げるコツ(その1)
-
※本文はこちら。 -
『これからの幼児教育』2015年春号8ページで紹介した「よくありがちな振り返り」の改善例や保育実践のポイントをご紹介します。子どもを見る視点や、表現方法などを参考にしてください。
-
●よくありがちな振り返り
-
●改善例
<振り返りの視点>
まず、振り返りの視点を保育者側に立って、もう少し具体的に考えてみましょう。振り返りの視点をより明確にすると、振り返りの内容が深まります。
- ・グループの一人ひとりの成果が生かされ、一人ひとりが大切なメンバーであることを実感できるような言葉がかけられていたか。
- ・ルールがあることで遊びが楽しくスムーズに運ぶことがわかり、ルールの必要性が十分伝わるような援助ができていたか。
<よくある振り返りの改善例>
- ① ルールを守れたかどうかだけを見ると、守れてはいた。しかし、なかなか金貨がもらえないグループのメンバーの様子を見ると、あまり考えずにじゃんけんをしていることが多いし、相手を選んでいるのでじゃんけんをする回数も少ない。これでは一人ひとりの成果がグループに生かされる期待は薄いと言える。ルールを守ることも大切だが、ゲームの流れづくりも必要だろう。さらに、自分の興味の追求が中心でチーム全体の利益にしていく意識の育ちも弱いように感じられる。
- ② グループの成果になっていなかったのは、当番活動など生活全般の中で一人ひとりの存在の意味や役立ちを伝えることが少なかったのかもしれない。また、ゲームの中でも個々への声かけも少なかったし、まだ全体の場で、一人ひとりが獲得したものを認め合う場を作る必要があったのかもしれない。
- ③ 保育者が勝ち負けにこだわり、1位のグループだけを認め、他のグループは軽く扱ってしまったのかもしれない。それぞれのグループの努力を認める必要があった。
<明日につながる保育実践のポイント>
■①②について
特に①のゲームの流れづくりについては、1回あたりの時間を3分程度にして、回数を増やすとよいでしょう。また、結果を確認する際、一人ひとりが金貨を獲得したことを認めるとともに、卵パック(10個入り)などを用意して、各自が納めていくことでグループへの役立ち感を実感できるようにするとよいでしょう。
また、金貨ゲームのほかに、しっぽ取りゲームや助け鬼など、一人ひとりの動きがわかりやすい活動を行うことで、グループ内での自他の動きを認識できるようになります。特に、助け鬼などでは、助けてもらったうれしさや安心感から感謝の気持ちが芽生えますし、仲間を助けたことから自分の役立ち感を感じられます。そういう気持ちや役立ち感を感じられるようにする言葉かけが必要でしょう。4歳児後半頃からこのような体験を少しずつできるようにしていくことも大切です。自分以外の人が自分自身にとって必要で大切な存在であることを体験できる場を多くもつとよいでしょう。このような活動を積み重ねていくことで、ドッジボールなどの個々の成果が見えにくい場でも協力し合えるようになります。
■③について
何回かゲームを繰り返すことにより、「次こそは」という期待(めあて)がもてるので、①②と同じように、1回あたりの時間を減らして回数を増やすとよいでしょう。さらにグループごとに1回目と2回目の努力の違いが見えるように、得点板(ボード)などを用意するのも一案です。例えば、あるグループはいつも5番目だとしても、1回戦よりも次の回の方が少し金貨を多く獲得できたとすれば、その多かった分の努力を認めるようにするとよいでしょう。逆に、1回戦目に1位だったグループは順位が落ちることがあります。勝敗は、そのときどきの活動の結果です。結果にとらわれすぎず、個々が努力したことに価値をもたせることで次への期待につながるものになってほしいと思います。
-
※ここでご紹介した内容は一例です。明日につながる振り返りにするポイントをぜひ各園で話し合ってみましょう。
-
- » ① 現役保育者の週日案の手書き実例紹介!
- » ② よくありがちな振り返りを明日に繋げるコツ(その1)
「表面的な状況の読み取りにとどまっているケース」 - »
③ よくありがちな振り返りを明日に繋げるコツ(その2)
「表面的な感想で終わり、課題に踏み込めていないケース」