(3) よくありがちな振り返りを明日に繋げるコツ(その2)
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※本文はこちら。 -
『これからの幼児教育』2015年春号10ページで紹介した「よくありがちな振り返り」の改善例や保育実践のポイントをご紹介します。子どもを見る視点や、表現方法などを参考にしてください。
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●よくありがちな振り返り
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●改善例
<振り返りの視点>
振り返りの視点は保育者の立場に立って書かれているのでよいと思います。この事例では、「よくある振り返りの改善例」と「明日につながる保育実践のポイント」を中心に解説します。
<よくある振り返りの改善例>
- ① A・B・Cは自分のしたい遊びを見つけている。特に今日のねらいにあるように、砂場に行ったA・Cは、相談しながらビールケースやといなどを組み合わせてダイナミックに砂場を構成し、互いに声をかけ合いながら水や葉っぱを流している。製作コーナーに行ったBは空き箱にゴムタイヤをつけて車を作り、ライトや窓をつけるなど工夫している。同じような活動をしていた幼児と考えを出し合って、積み木や板などを組み合わせて高速道路を作って遊んでいる。自分の考えを言ったり、相手の考えを受け入れる関係は育ってきている。しかし、Bはときどき、自分の考えを強く出すので、それを相手が仕方なく受け入れる場面も見られる。
- ② Dにとってお茶会は新鮮な体験だったと思う。しかし、Dは黙って自分の思うように遊びを進めているので、保育者が客になって仲間に入ったことをきっかけに、E・Fは猫になって客になっている。なぜ猫だったのだろうか?猫は「人」になるより、抵抗を感じなかったのか、もしくは猫だとDに受け入れられると思ったのか?いずれにしてもよい状況ではないのに、E・Fの気持ちを確かめずに見過ごしてしまった。保育者は敬老の日の経験を生かした遊びを4人で始めたととらえたが、お茶会のどこにおもしろさを感じたかなど、経験したことの確認が足りなかったし、4人の共通項を見い出す努力が足りなかった。
- ③ 自分たちで場を設定してリレーを始められるようになったが、保育者の調整がHの気持ちとずれていたようだ。「ずるい」というHの気持ちの受け止めが弱かったのかもしれない。トラブルの原因は勝ちたい一心で、Iがコーンの手前を回って戻ってきたことにあるようだ。このくやしさを受け止めず、ルールの確認で終わってしまったことが考えられる。さらに思い起こしてみると、得点板も用意していたのに、活用の仕方がわからなかったのか、使われずにいた。もう少し遊びが軌道に乗るまで丁寧に関わる必要があった。
<明日につながる保育実践のポイント>
■①について
「よくある振り返り」では、保育者は「遊んでいる」という姿でとらえていますが、「何を、どのように」遊んでいるかという点についてはまだ見えてないようです。「遊びを通して総合的に指導する」ためには、発達に応じて「何を大切にしたいのか(期待するのか)」ということを明確にもつことが大切です。また、一人ひとりの幼児が遊びの場で「何におもしろさを感じたのか」「自分のめあてを追求するためにどのような工夫をしているのか」など、さまざまな視点からとらえて、本人や周りの幼児に一人ひとりの努力や工夫を伝えることもポイントでしょう。また、友だちの存在の意味も伝えたいものです。「相手の考えを聞いて、自分の考えをもつ」ことは、5歳児にとっては特に協同的な学びとして大切にしたい視点です。
■②について
8ページの事例と同じように、一人ひとりの存在や友だちの必要性を感じられることが大切です。特にDちゃんには、自分が遊びを楽しく展開するにはそれに応じてくれる友だちがいてこそ、ということを丁寧に伝え、他の幼児の思いにも気づけるようにすることがポイントです。また、お茶会やパーティー、お店やさんごっこなどの場面で、相手の立場にも立ちながら遊びを展開するような援助も必要でしょう。
■③について
「くやしい」気持ちはなかなか解消されないものです。表面的な解決方法では十分といえない場合があります。このためにも保育者は、幼児が遊ぶ場面をしっかり見ることが大切です。誰がどんな思いでいるのかということは、保育を展開するうえで非常に重要な視点です。この事例のように、保育者は当面のトラブルを解決したように見えますが、一人ひとりの思いはもっと深いものがあったと考えられます。そのとき、保育者はどうすればよかったのか、また今後はどうすればよいかについては、クラスの一人ひとりの幼児と保育者の信頼関係によります。一人ひとりの幼児と自分の関係を今一度、点検してみるのもよいでしょう。年度末の今だからこそ、今後の園生活の方向が見いだせると思います。
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※ここでご紹介した内容は一例です。明日につながる振り返りにするポイントをぜひ各園で話し合ってみましょう。
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- » ① 現役保育者の週日案の手書き実例紹介!
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② よくありがちな振り返りを明日に繋げるコツ(その1)
「表面的な状況の読み取りにとどまっているケース」 - »
③ よくありがちな振り返りを明日に繋げるコツ(その2)
「表面的な感想で終わり、課題に踏み込めていないケース」