ベネッセ教育総合研究所
特集 コンペ型事業を考える
千葉吉裕教諭
東京都立晴海総合高校
千葉吉裕教諭
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【高校の関心】
進路指導の現場から見たGP
採択大学はもっと積極的にPRを
 GPや21世紀COEなどコンペ型プログラムを、高校側はどのように受け止めているのだろうか。教員は、生徒や保護者にどの程度情報を提供しているのか。東京都立晴海総合高校で進路指導を担当する千葉吉裕教諭に聞いた。

進路指導でGPを取り上げる

 千葉教諭は、高校での進路指導の現状について、「大学が個性化、多様化しているにも関わらず、高校現場では相変わらず偏差値による大学選びが中心になっている。大学が変わり始めて10年以上もたつのに、私たち教員の大学に対する認識はあまり変わっていないのではないか」と分析する。カリキュラムの工夫や新しい教育方法の導入といった大学の中身ではなく、偏差値による序列が大学の評価基準になっているという指摘だ。
 そんな中、特色GPについて「学部・学科まで特定して、優れた教育をしていることを第三者の客観的な目で保証してくれる。実績を採択条件にしているので、大学選択の指標の一つになり得る」と見る。ただし、21世紀COEについては、「研究レベルに対する評価なので、高校生が大学を選ぶ基準としてはどうか」という意見だ。  単位制総合学科の晴海総合高校は、1996年度の開校以来、キャリア意識の育成に力を注ぐ。
 年に10回ほど「相談部だより」を発行し、全生徒と教員に配布。進学に関わる情報提供を小まめに行う。その中で、GPに関しても導入の背景から、その意義、採択大学の予測、結果などを紹介してきた。
 さらに、今年3月からは2・3年生の保護者に向けて、大学教育の変容とそれに対応した大学選択、進路指導の必要性を説明する「進路の夕べ」を開催。志望校がほぼ決定する10月以降は、1・2年生の保護者を対象にしている。
 個別の進路指導の中でも、大学のホームページや新聞記事を使って、GPに採択された大学の取り組みを具体的に説明。オープンキャンパスに参加する時は、そういう視点から大学を見てみるようにアドバイスしているという。
 「採択された取り組みに強い関心を示す生徒もいれば、まったく関係ないといった感じの生徒もいる。多くの生徒は、その大学がどんなカリキュラムになっているのか、どんな人が教授をしているのか、といった情報の一つとしてGPの採択を捉えているようだ。自分のやりたいこと、学びたいことができる大学なのか、トータルな視点で考えるように指導している」

高校生に分かりやすい表現で

 千葉教諭は、全国高等学校進路指導協議会の事務局長も務めるが、「総合的な学習の時間などを活用して、志望大学について生徒自身に調べさせるような取り組みは増えている。ただ、その中でGP、COEについて、何らかの説明や指導をしているケースは、極めて少ないと思う。多くの先生方は、大学の個性化をめぐるこのような動きを、どう扱うべきか戸惑っているのではないでしょうか」と見る。「仮に大学の個性化に合わせた形での進路指導を試みようとしても、現状では保護者の理解を得るのは難しいでしょう」と言う。
 GPなどに採択された大学は、大学案内やホームページ、その他の募集広告でそのことを紹介しているが、本誌のアンケート調査でも明らかなように、高校生への浸透はいまひとつだ。
 その原因について千葉教諭は、「大学案内やホームページを見ても、採択された教育内容がはっきり見えてこないことが大きい」と指摘する。高校生に伝えるには「申請書をそのままホームページに載せるだけでなく、その内容を彼らに理解できる言葉で表現し、写真やイラストも使って、教育の中身をできるだけ分かりやすく見せる工夫が必要」と考える。また、採択大学が協力して高校生向けの情報発信を行うことも提案している。
 「大学は採択されたことを、高校生に対してもっと積極的にPRすべき。彼らの間でGPに対する理解が広まっていけば、いずれ志望校を選択する際の基準の一つになるでしょう」と話す。



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