高等教育研究室

研究室トピックス

【アナリストの視点】
高校生は大学からの発信に“大学の本気”を見ています

2013年11月15日 掲載
 ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室
 シニアアナリスト 榊原 広幸

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高校生の志望の変化は模試データに表れています

 毎年、ベネッセコーポレーションでは、高校2年生に対して記述式の総合学力テスト(模試)を年に3回(7月、11月、1月)行っています。2012年度の場合、いずれの回も受験者数が40万人を超えています。高校生にとっては、大学受験に向けて自分の学力を全国的に位置確認する機会であり、志望校に対する合格可能性を測る機会でもあります。
 模試データから高校生の志望校が模試受験時期により変化することがわかります。高校2年生の7月には国公立大学を第一志望にしていた人が、11月には私立大学に志望変更するケースなどです。その際になされる解釈は「5教科の受験勉強に耐えられず、受験対策3教科の私立大学に変更したのだろう」といったものが一般的であったようです。

オープンキャンパスをきっかけにした志望の変化には2タイプが伺えます

 模試データに加えて、高校生の志望校変化の時期やきっかけのエビデンスを得ることを目的に高等教育研究室では、今年度7月より高校1年生、2年生に対して「志望校に関わるパネル調査」を開始しました。同一人物から月に1回のタイミングで志望校に関わる情報をアンケート調査し、志望校に対する意識の変化をチェックしています。
 9月までの調査結果から一例をご紹介すると、7月から8月にかけてオープンキャンパスをきっかけにして、志望校を変更したという人が多くありました。複数の大学のオープンキャンパスに参加し、大学を比較して志望校を検討しています。そして、同じオープンキャンパスをきっかけにしていても、「志望をより具体化する人(一つの学部学科に対する意識を強くする人)」と「志望を拡散させる人(他の学部学科に興味を持つようになる人)」の2タイプがいました。私たちが感覚的に持っていたことを高校生の生声が検証してくれています。

入学後に活性度の高い学生は高校生時代に大学を良く調べています

 また、大学のホームページもきっかけになっています。「志望校選択で影響を受けたモノは大学のホームページ。このページをみなかったら、大学について考えなかったと思う。」という回答も寄せられました。以前行った「大学生が高校生時代を振り返る」定性インタビュー調査からは「大学入学後に活性度の高い学生は、高校生時代に大学の取り組みや授業の内容を良く調べている」という結果が出ており、「複数の大学のホームページを見ていると、大学が本気かどうかの違いが見えてくる」という発言を得ています。
 大学が優秀な学生の募集を目的に情報発信を企画する際には、異なるニーズにそれぞれ対応する視点と共に、施策を学生のために本気でやろうとしている大学の姿勢を、表現して行く必要があるのではないでしょうか。

プロフィール

榊原 広幸 (さかきばら ひろゆき シニアアナリスト)
1988年(株)福武書店(現<株>ベネッセコーポレーション)入社。高校事業部にて、大学受験模試等のデータ・情報による大学入試動向分析、北海道地区及び関東地区の高等学校教員の進学指導支援に関わる業務に従事。その後、大学入試分析の全国統括を担当。2012年4月より現職。

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