チーム協働による
創造性を科学する

How can we create new values as a team?

あなたのチームでは
こんなことありませんか?

チームで協働しながら課題解決のアイデアを考え、実行していくプロセスは、個⼈で⾏うよりも複雑です。
たくさんのアイデアを出して選択していくような進め方では、十分な連携ができないことあります。

課題. 01 ブレスト

あまり意識せずにブレストをしてアイデアをたくさん出すが、着地点が見えなくなる。

これまでの研究でわかっていること

創造的なアイデアを形にする
「4つのフェーズ」の壁を乗り越える

個人の創造的なアイデアを企業や社会のイノベーションへと変えるには「4つのフェーズ(生成、精緻化、擁護、実行)」があり*1、それぞれのフェーズにおいて「必要とされる社会的ネットワーク」は異なることがわかっています。つまり、アイデアを形にしていくためには、ブレストによるアイデアの生成だけでなく、チームメンバーのもつそれぞれの強みを活かし、協力者を必要に応じて巻き込みながら、4つのフェーズの壁を乗り越える力が必要となります。

課題. 02 ゴールの共有

チームメンバーで、最終的な目標(ゴール)の認識を合わせるのが難しい。

これまでの研究でわかっていること

「チーム」概念の変化に合わせた
チーミング

リモートワークの普及による働き⽅の変化もあり、勤務地に縛られない勤務や、副業解禁もふくめ複数の組織に所属しながらプロジェクト型で働くことも増えていることから、チームの境界が流動的、重複的、かつ、分散的になるなど曖昧になっています*2。協力者の力を結集するためには、多様なメンバーとゴールの認識を合わせる必要があります。そこで、「チーム」自体を大きく捉えたうえで、メンバーどうしの⼼理的安全性を保ちながらファシリテーションやプロジェクトをマネジメントするチーミング⼒が必要となります。

課題. 03 実行企画の決定

時間がないなかでプレッシャーを感じ、出たアイデアをあまり考えずに実行する。

これまでの研究でわかっていること

アイデアを形にする創造的プロセス
「クリエイティブ・シンセシス」

並外れた創造性を継続的に実⾏している集団に特徴的なプロセスとして「クリエイティブ・シンセシス」*3が注⽬されています。これは、⼀つのアイデアをチームで集団的に注視し、具現化に向けて相乗りあるいは深掘りしていくもので、ブレイクスルーを生み出し、イノベーションにつながるとされています。⽇本でも、⼀般企業を対象とした予備調査により類似のプロセスによる効果が確認されています*4

  1. *1 Perry-Smith, J. E., &; Mannucci, P. V. (2017). From Creativity to Innovation: The Social Network Drivers of the Four Phases of the Idea Journey. Academy of Management Review, 42(1), 53‒79.
  2. *2 Mortensen, M., & Haas, M. R. (2018). Perspective—Rethinking teams: From bounded membership to dynamic participation. Organization Science, 29(2).
  3. *3 Harvey, S. (2014). Creative Synthesis: Exploring the Process of Extraordinary Group Creativity. Academy of Management Review, 39(3), 324‒343.
  4. *4 古川久敬. (2018). 組織⾏動研究の展望:パラドックスを抱えた組織と個⼈を意識して. 組織科学, 52(2), 47‒58.

Our Vision

学習、イノベーション、成長のための
チーム創造性の研究を通して
大人や子どもたちの
「未来を創る力」を育む

Nurture "the power to create the future" in adults and children
through research on team creativity for learning, innovation, and growth

現在の研究テーマ Research Theme

社会⼈・⼤学⽣が、個人・チームで新しい価値を創る行動に着⽬し、アイデアを生成、精緻化、擁護、実行するまでの4つのフェーズにおけるチーム創造性のプロセスを明らかにする。

大学生の社会人メンターがいる
問題解決型授業におけるチーム創造性

社会⼈メンターが参加する、答えのない問いに挑戦する学⽣チームの問題解決型授業/プロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)を対象とした調査により、⼤学⽣が創造性の発揮性が求められる場面で効果的な社会⼈との関わりを明らかにする。

社会人がアイデアを提案、
実現するプロセスにおけるチーム創造性

オンラインで⾏われる社会⼈が参加するアイデアソンを対象とした調査により、新しいアイデアを実現するために必要となるプロセスを明らかにする。

企業組織における上司の
リーダーシップとチーム創造性の関係

企業において新しい企画を発案し、実行するプロセスにおける上司のリーダーシップを調査することで、組織的な創造性を高める関わり方を明らかにする。企業において新しい企画を発案し、実行するプロセスにおける上司のリーダーシップを調査することで、組織的な創造性を高める関わり方を明らかにする。

研究成果 Research Outcomes

4つのフェーズに合わせた社会人メンターの関わりが学生の行動を促進

社会人がメンターとして関わる大学生のプロジェクト型の授業が増えるなか、どのような社会人の関わりが学生の学びを促進し、行動を促すのか、まだ議論の余地がある。そこで、大学生の授業期間における社会人の関わりを、アイデアの⽣成、アイデアの精緻化、アイデアの擁護、アイデアの実装それぞれのフェーズで有効な社会人のリーダーシップのスタイルは何かを調べたところ、各フェーズに有効なリーダーシップスタイルが明らかになった

(2021年度 東京大学大学院経済学研究科 修士論文)

コアコンセプト生成の成功が、チームの持続的な議論には重要

企業において、 近年の働き⽅の変化に合わせたチームでの創造性の発揮に注⽬が集まっているが 、そのプロセスの複雑さの観点から議論の余地がある。そこで、 企業内で⾏う新規事業のアイデアソンにおけるチーム議論を分析した。結果、アイデアの発想および精緻化のフェーズにおいて、コアコンセプトの⽣成に成功したチームが議論を活性化し、アイデアソン後も継続的に議論を進めていた

(2021/10/3 - 日本創造学会 研究発表)

フェーズを合わせたリーダーシップがチーム創造性を左右する

アイデアの生成、精緻化、擁護、実行の各段階では促進要因が異なることが指摘されているが、各段階で必要となるリーダーシップスタイルの違いについては議論の余地がある。そこで、複数の企業を対象とした質問紙調査の結果、アイデア生成の段階では、知的刺激を広げるようなリーダー、精緻化および擁護する段階では、チームメンバーの参加型意思を支援すること、アイデアを実行する段階では、個別配慮と⿎舞的動機付け、定期的なコーチングが必要であることがわかった。

(2021年度 東京大学大学院経済学研究科 修士論文)
クリエイティビティ研究を
通して実現したい未来
組織でクリエイティビティを
発揮するための関わり方を
明らかにする
研究者のメッセージ

企業として成果を上げ、経済を活性化させるには、新しい製品・サービスを生み出していくことが欠かせません。そのため、ますます創造性を発揮することが求められるようになっています。実は、古くから「チームワークよく、創意工夫に富む」というのが日本企業の現場の強みと言われてきました。ところが、失われた30年とも言われる閉塞感とともに、日本企業の創造性の低下が叫ばれるようになっています。企業を取り巻く環境が変化したことで、昔ながらのやり方では通用しなくなったからでしょうか?それとも、日本企業の現場が変容してしまったからでしょうか? こうした課題に一つ一つ丁寧に答え、未来への処方箋を描くためにも、フィールド・ベースのエビデンスの蓄積が求められています。本プロジェクトでは、チーム協働による創造性を科学的に解明していきます。

稲⽔ 伸⾏(Nobuyuki Inamizu)

東京⼤学⼤学院 経済学研究科 准教授
1980年広島県生まれ。2003年東京大学経済学部卒業。2008年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。2005~2008年日本学術振興会特別研究員(DC1)、東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員、同特任助教、筑波大学ビジネスサイエンス系准教授を経て、2016年より現職。博士 (経済学)(東京大学、2008年)。企業との共同研究によるオフィス学プロジェクトを主宰。主な著作として『流動化する組織の意思決定』(東京大学出版会、2014年。第31回組織学会高宮賞著書部門受賞)。

人を巻き込みながら、
創造的なアイデアを
実現する力を育む
学びに貢献する
研究者のメッセージ

創造性、クリエイティビティという言葉にどのようなイメージを持っているでしょうか?
時代、学術分野により定義は様々ですが、多くの研究者に共通するのは「有用性(適切さ)と独創性(新奇性)」の両方を持つ点です。特に、教育文脈では「創造する能力」あるいは「人格特性」と位置づけ、「特別な才能の創造性(potentiality)」だけでなく、それもふくめた「自己実現の創造性(creativity)」を育むことと認識されています。いままで一部の天才が持つものと語られてきましたが、近年では違います。どんな人でも初めは小さな挑戦や選択、努力から始まり、才能を開花させます。自分にとって新しい挑戦であれば、それは創造性の一端であり、その積み重ね・連続が創造力を育みます。本研究を通して、想いを形にする創造力を一人でも多く持てる未来創りに挑戦します。

佐藤 徳紀

佐藤 徳紀(Tokunori Sato)

ベネッセ教育総合研究所 研究員
1983年福島県生まれ。2012年(株)ベネッセコーポレーションに⼊社後、中学⽣向けの理科教科の教材開発を担当。2016年6⽉から初等中等領域の調査を担当後、情報企画室、教育研究企画室の研究員に着任。専⾨は電気⼯学、エネルギー・環境教育、理科教育、博⼠(⼯学)。担当した主な調査は、「第6回学習指導基本調査」(2016年)、「⼦どもの⽣活と学び」研究プロジェクトの質的調査(2016年)など。これまでの主な論⽂は、「中学⽣の理科の好みに及ぼす電気の学習の影響」(2011年)、「中学校と⼤学の連携によるエネルギーを題材とした理科学習プログラムの開発」(2011年)など。

今後の展望 Future Prospects

以下のようなテーマでの研究パートナーを募集しています。

Future Prospects 01

社会人および大学生の
チームの創造的プロセスの
研究や議論

Research and discussion on the creative process of teams of working adults and university students

社会人および大学生のフィールドにおいてチーム創造性に関連した取り組みをされている研究者・実践家。

Future Prospects 02

⼤学⽣の新しい価値を
創る力(創造力)を育成する
教育プログラムの開発

Development of classes to foster the ability of university students to create new value (creativity)

大学生の創造力の育成に関心がある授業担当者や大学関係者。

Future Prospects 03

大企業など多様な従業員で
構成されるチームによる
創造性発揮のための人財開発

Human resources development of team creativity among diverse employees in a large corporation

組織内で新しい企画アイデアの⽣成〜実⾏までの、チーム創造性を発揮する人財開発に興味があり、連携が可能な方。

学生が社会に出るまでの
過渡期の創造性を育む
創造性・教育の研究者からのメッセ―ジ

創造性の涵養は学校や企業での教育目的として掲げられてきましたが、コロナ禍に代表される急激な社会情勢の変化で注目が高まっています。
創造性といっても様々な種類やレベルがあります。自分の中で新しい発見をすることも、友達が喜んでくれるプレゼントを考えるのも創造性の一端でしょう。一方で、社会に出ると、自分や周囲の人だけでは完結しない創造性を発揮することが期待されます。そのため大学教育では、社会で活かせる創造性を育成する必要があります。そこで育むのは、専門知識の記憶や理解だけでなく、他者と協働する力、自分を信じる力、より良い社会を追求する倫理観の醸成など幅広い人間の良い性質をバランスよく統合した力になるでしょう。
ベネッセは人生のあらゆるステージの教育・福祉に取り組んできた蓄積があります。学生が社会人になるまでの過渡期の創造性がどのように読み解かれるのか、そして、それがどのように学びの支援に展開するのか。新しい時代を切り開く研究に注目です。

石黒 千晶

石黒 千晶(Chiaki Ishiguro)

東京大学教育学部総合教育科学科卒業。同大学大学院学際情報学府文化人間情報学専攻修士課程修了。同大学院教育学研究科心身発達科学専修博士課程修了。日本学術振興会特別研究員(DC2)、玉川大学脳科学研究所研究員を経て、2019年、金沢工業大学助教に就任。

研究レポート Research Report

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