特集 「考える力」を引き出す授業―理数教科からのアプローチ―

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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■国語
 渡部先生の担当教科は国語。多くの生徒は、単語の数が増えれば増えるほど、言葉によって喚起されるイメージも広がっていくと考えている。そこで先生は俳句や短歌の単元に入るとき、生徒たちが持っているその先入観に揺さぶりをかける。
 例えば、「音」という言葉からどんなイメージが浮かぶか尋ねると、「車のエンジン音」「楽器」「犬の鳴き声」など、さまざまな答えが返ってくる。ところが、「水の音」「蛙飛び込む」「古池」と言葉を重ねていくごとに、雑多だった生徒のイメージは徐々に絞られ、最後には、一つのはっきりとした風景へと収れんしていく。
 俳句や短歌に触れるとき、多くの生徒は、表面的な意味だけをなぞって、その作品を理解したと思いがちだ。だが、このように、言葉を連ねていくことによって一つの明瞭な風景が浮かび上がってくることに驚きを感じる生徒が出てくる。「なぜだろう」と立ち止まって考えを巡らせる「感性」が働き始めるところだ。
 そこで、今度は先生が「用いられている言葉と言葉のつながりに目を向けてみよう」といったヒントを生徒に投げかける。そうすると、生徒は芭蕉の作品世界を、一つひとつの言葉やそのつながりを有機的にとらえながら、「科学的なものの見方・考え方」によって読み込んでいく力を身につけるわけだ。


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