特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
   PAGE 20/21 前ページ 次ページ

相手の主張を受け止めて意見を述べる力を育てる

 麗澤中学・高校では、他者の意図を正確に読み解く力の育成にも力を入れている。「相手の主張を受け止めて初めて、コミュニケーションは成り立つ」(竹政校長)という考えがあってのことだが、その最初の段階として取り入れているのが「絵画の分析」だ。これは生徒に、例えば風景画を見せ、季節や天気、場所、時間、描かれた人物が何を考えているか、などを細かく読み取らせて文章に書かせる学習だ。
  「たった1枚の絵からでも、驚くほど多くの情報を引き出すことができます。こうした経験を積むことで、他者の伝えたいことを丁寧に読み解く態度を育てたいと考えています。更に、絵画を見てわかったことは必ず言葉に直し、文章に整えさせます。これを経験しておけば、複雑な文章の分析にもスムーズに移行できますから」(三森所長)
  同様に、「視点を変える」というテーマで物語を分析する学習も取り入れられている。
  例えば、少女が子猫を拾う四コママンガを見せて、少女、子猫、そして作者という三者それぞれの気持ちを文章でまとめさせる。
  「一つの物語でも、登場人物の視点によって気持ちが大きく変わることに気づかせます。初めは単純な物語を題材にし、次第に登場人物が複雑な小説などに移っていくのです。こうした訓練は、日常生活でも相手の話に耳を傾け、その中で自分の意見を主張する能力を育てることにもつながります」(三森所長)
  こうしたトレーニングを積んだあと、文章を読む学習は、1冊の小説を読み解き、各々の分析を話し合う授業へと進む。他者の主張に耳を傾けることができるようになった生徒たちは、「Aさんはこう読んでいるけど、私はこういう理由からこう読む」などと、いったん相手の主張を受け止めた上で意見を主張する建設的な議論ができるようになる
  こうした授業では、徹底して論理的な思考の育成を目指しているが、そこで扱う教材には、人間の機微や深い感情を描いた作品を取り上げている。そこには、「知と情のバランスの取れた生徒を育てたい」(三森所長・竹政校長)という思いが込められている。

   PAGE 20/21 前ページ 次ページ
目次へもどる
中学校向けトップへ