特集 つながる「保護者」と「学校」

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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教師にも議論をまとめる力や学校の立場の説明能力が必要

  05年度から2年間は新システムの定着に全力を注ぎ、PTAの役割や新システムをまとめた「PTAの手引き」も配付した。その結果、以前に比べ、委員や役員が決まりやすくなり、実行委員会の討論にも活気が出てきた。「学校への関心が高まってきていると思います」と高山副校長も一定の成果を感じている。
 「一部の声」にとどまっていた意見が、PTAを通じてきちんと学校に届けられるようになった点も組織改革の成果といえる。「以前は直接学校に苦情を言う方法を知らなかった保護者が、学級PTAで意見を言えるようになった効果は大きいはず」と浅原氏は語る。
 とはいえ、保護者の意識改革はまだまだ道半ばだ。だれでも学校に意見が言いやすくなった反面、それに伴う責任については、まだ意識が追いついていない面もあるという。
 「『区PTAソフトボールに参加したい』という要望が寄せられましたので、早速、参加者の募集や当日の会場設営係をしてくれる方を募りました。しかし、係の応募がなく、結局はできませんでした。『ものを言う以上は、自分の責任を果たす』という意識をどのように啓発していくかが課題です」(浅原氏)
 この経緯はPTA便りを通じて保護者全員に通知した。失敗の過程も示すことで、少しでも意識を高めてほしいという意図からだ。
 一方、新体制によって、教師にも新しいスキルが求められるようになっていると、高山副校長は語る。
 「学級単位で動くようになったことで、今まで以上に学校に多様な意見が寄せられるようになりました。個人的な要望に議論が流されてしまうこともあるので、教師には、学校の立場をきちんと説明したり、錯綜した議論からうまく保護者の意見を集約したりする力が求められるようになっています。教師全員がどのように保護者と接していくべきか、改めて考えなければならないと思います」
 赤木校長も言葉を継ぐ。
 「保護者が学校にものを言いやすくなっても、『保護者対学校』という構図の議論が増えては意味がありません。そのためにも、保護者に直接、学校のありのままの姿を見ていただくことに力を入れていきたいと思います。平日だけだった学校開放日を土日にも開催するなど、今後は生徒や教師の姿を直に見ていただく機会を増やしていこうと考えています。改革当初の意図を、どのように引き継ぎ、具体化していくかが問われていると感じています」
 保護者の参加意欲を、どのように学校との協働に生かしていくべきか。学校、保護者双方が、試行錯誤の中で学んでいる。
Point:保護者会などは、集まりやすい日時に柔軟に決める、実行委員会の議事録を、PTA便りで発信する

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