特集 データでひもとく学習指導の「いま」と「これから」

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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基礎・基本重視に回帰する教師の意識と学力観

 「学習指導基本調査」の結果には、教師の意識や学力観の変化が如実に表れていました。2000年ごろから始まった国の学力向上重視への転換、そして保護者の学力向上への期待に応えたいという気持ちが、強く影響しているのを感じます。特に、子どもの可能性や個性を支援する意識が低くなっている一方で、基礎・基本を重視するようになり、宿題の量も増えています。「脱ゆとり」の傾向が顕著に表れており、いわゆる教え込みに近い伝統的な教授法への回帰がうかがえます
 こうした教師の変化は、07年4月に実施された「全国学力・学習状況調査(以下、学力調査)」の結果にも表れています。A問題(「知識」)では、中学3年生の数学を除き、平均正答率が8割に達しました。新聞などでも、平均正答率が6、7割だったB問題(「活用」)に比べ、相対的に到達度を評価する論調が見受けられます。
 しかし、これを指導の成果と単純に喜ぶのは早計です。今回の学力調査の目的は、ナショナルミニマム(国の最低基準)への到達度の検証であり、A問題は、問題自体が難易度の高いものではありませんでした。厳しい言い方をすれば、「できて当たり前」なのです。つまり、「知識に関して課題がないことを意味してはいない」というのが最も妥当な理解でしょう。「これまで通りの授業で問題はない」と安心してはならないと思います。

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