|
 |
 |
|
| |
|
（2）交付金と標準額の連動が効率化の意欲を削ぐ |
国立大学の授業料設定に関する現行の制度には、いろいろな問題があります。
第一に、国が標準額を値上げすると、多くの大学がそれに追従して授業料が一律化してしまうことです。法人化の目的の一つは大学の個性化、多様化であるはずなのに、標準額が増額されるとその促進が滞ってしまうわけです。私は、授業料水準も大学の個性の一部であると考えています。ですから、国はしばらくの間は標準額を一定にし、上限である「10％」をもう少し上げるほうがよいと思います。つまり、大学の自由裁量度を大きくし、法人化の理念に沿うようなシステムにすべきだということです。
第二の問題点は、標準額の増額が国立大学の掲げている中期目標・計画の遂行の妨げになる可能性があるということです。大学によっては、中期目標・計画に、教育機会の均等化に貢献し、適切な授業料を設定することを挙げているところがあります。そのような大学でも、国が標準額を値上げしてしまうと、自大学の授業料を上げないと運営費交付金の減額分を補填できないため、中期目標・計画の達成が難しくなります。目標と計画の策定時には、標準額の値上げを予測することは困難だった点にも、配慮する必要があるでしょう。
三点目は、運営費交付金の減額と授業料標準額値上げとの連動が、国立大学の改革意欲を削ぐという問題です。毎年運営費交付金が減らされるため、各国立大学は経営の効率化を図らなければいけなくなっています。資金、施設の効率的で効果的な利用は、各大学で積極的に始まっています。人材の効果的配置も行われています。しかしこれらの努力でせっかく施設費や人件費を減らすことができても、授業料値上げによって、その分が「容易に」埋め合わせられてしまうと、効率化の意欲を削ぐことになりかねません。自己収入の増加は、標準額の値上げではなく、大学が独自に考えるべきです。ですから、運営費交付金減額と授業料標準額の値上げは、やはり切り離す方がよいと思います。
第四に、国と国立大学は、授業料標準額の設定や自校での値上げについてもう少し詳しい理由を説明しないと、受験生や保護者が納得できないという問題を挙げることができます。学生の教育にはどの程度のコストがかかっているのか。値上げによって、教育はどのように改善されるのか。これまでは私立大学との格差ばかりを理由に授業料を値上げしてきましたが、それでは国立大学だけではなく、私立大学の学生の親も納得しないと思われます。国立の授業料が値上げされると、それに合わせて値上げする私立大学も多いからです。
最後に、国立大学は授業料水準をもう少し早く決定すべきだという問題を提起しておきます。国の標準額が決定しないと授業料を決められないという事情はわかりますが、受験生のほとんどが、入学する大学をすでに決めている３月の半ばまで発表できないのは、困ったものです。50万円を超えるサービスを売るというのに、正確な価格を知らせないまま客を集めるような業界など、国立大学以外にはありません。受験生がどの大学を受験するのか決定するセンター試験前には、発表すべきだと考えます。
|
|
|
|
|
|
PAGE
2/6
