特集 教員養成システムの論点

安念潤司
●内閣府規制改革・民間開放推進会議 専門委員
●成蹊大学法科大学院教授

安念潤司


あんねん・じゅんじ
1955年北海道生まれ。東京大学法学部卒。82年北海道大学法学部助教授。成蹊大学法学部助教授を経て93年同教授。04年成蹊大学法科大学院教授。弁護士。

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【インタビュー 2】
内閣府規制改革・民間開放推進会議 専門委員
成蹊大学法科大学院教授
安念潤司

教職大学院制度は教員の質的向上につながるか

制度の実効性に疑問

修了者の優遇に危惧

―内閣府規制改革・民間開放推進会議では、中教審で検討されている教職大学院構想に懸念を表明しています。

 我々は教育の専門家ではないので、教職大学院の教育の中身について異議を唱えるものではありません。しかし、その仕組みには、大きく二つの問題点があると思っています。最も危惧しているのは、修了者に対する処遇です。本当に優秀な教員を重用するのは構いませんが、学歴でアドバンテージをつけるべきではありません。

―素案では、制度的に修了者を優遇するとは書いていませんが。
 もちろんそうでしょう。しかし、給与面の処遇についての「各任命権者において検討することになるものと考えられる」、新卒の修了者についての「通常の採用選考方法とは異なる観点・方法で選考することなどの工夫も考えられる」などの表現は、明らかに検討や工夫をすべきだということを意味しています。その意図がなければ、わざわざその文言を盛り込む必要はないからです。
 優秀な教員を養成しようという志が高いからといって、修了者の能力が優れているとは限りません。優秀な教員かどうかは、どの教育機関を出たかではなく、実際に教壇に立ってからの評価結果のみで判断すべきだというのが我々の主張です。

―修了者が優遇されないのであれば、学生にとっても、大学院にとっても、魅力が乏しいものになりませんか。

 誤解を恐れずにいえば、大学院を出たことを評価されなければ嫌だという程度の人に、児童・生徒を教えてもらいたくはありません。自分は勉強して、力をつけたのだから、将来は必ず評価されるはずだと信じている人に教えてもらいたい。
 同じように、修了者を優遇することが必要と考える大学に教職大学院をつくってほしくありません。ユーザーから信頼される教育機関であれば、優遇策がなくてもおのずと学生が集まるようになります。この「おのずと」というのが大切で、まず優遇策ありきであってはならないのです。


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