特集 教員養成システムの論点

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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評価の専門家育成が必要

 免許更新制では、更新の可否をどう判断するかがポイントとなる。明石教授は、授業の技量検定で判断すべきだとの意見だ。「これまでは、採用時に能力差があっても、経験を積むことで授業や学級運営の能力が向上すると信じられてきた。しかし、ベテラン教員の下でも学級崩壊が起きている以上、そうした楽観的な考え方を見直す必要があるのではないか。授業や学級運営の技量を測定し、それに基づく免許更新制度を考えなければいけない」。
 「授業を成立させるには、教員の人間性、意欲、技量など総合的な能力が求められる。人間性や意欲の測定はとても難しいが、板書は読みやすく的確か、質問にわかりやすく答えられるか、思考を助けるための適切な問いかけができるか、といった教育の技術は、測定方法さえ工夫すれば客観的に評価できる」と言う。
 例えば、教員を児童・生徒役として模擬授業を行い、教員を中心とした評価集団が、技量の各要素を数値化して判断する。そのためには、技量の測定システムの開発や評価を担当する専門家の育成が課題になる。「専門家による評価が適切に機能すれば、教員に求められる能力の6、7割は技量検定を通して判断できる。教員の世界で免許更新制が機能するようになれば、これまで幾度も議論になっている医師免許の更新制にも大きな影響を与えるだろう」。
 教員の質が低下した要因の一つは、ワイングラス型と呼ばれる年齢構成の偏りにある、と指摘。多くの中堅教員が、後輩を指導する機会に恵まれず、結果として自らを成長させられなかった。
 免許更新制を導入する際には、更新を認められなかった教員に対するケアプログラムも欠かせないと考えている。ケアプログラムでは、出身大学または教育委員会と連携した大学で、技量向上のためのトレーニングを積むことを想定している。「大学に戻り教員志望の熱意ある学生たちと共に学ぶことで、自らの経験を伝えながらあらためて技量を磨き、自信を回復してもらうといったことが考えられる」。「教職GP」に採択された千葉大学の取り組みは、そうしたケアプログラムの策定を視野に入れている。
 教員養成課程は、(1)実社会を知るための体験を充実させる(2)臨床教育としての教育実習を充実させる(3)授業に深みを与えるための教科専門教育を強化する、の3点を改善すべきポイントとして挙げる。「多くの大学の教員養成課程が、このような方向でプログラム改革を進めているのは、教員の能力に対する危機感が広がっていることの表れといえる。そこに教職大学院、免許更新制が加わることで、教員の養成と質保証のシステムは改善されるだろう」。


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