2007年５月、長期目標を見据え、2008年から創立90周年を迎える2012年までの５年間を第�T期とする中期目標を打ち出した。ここでは「仕組みづくり」を優先する考えだ。
　まず行ったのは法人名の改称だ。従来の法人名は、1998年に広島国際大学を開設し3大学体制となった実態に即していなかった。また、旧大阪工業大学高校は、2003年に工業科の募集を停止し普通科のみとなったが、校名から「工業高校」のイメージを払拭することも改称決断の理由だった。「常翔」とは「常に天翔るもの」という意味。「いつでも天空を飛翔するような学生を育てたい」という思いが込められている。
　中期目標での重要施策の一つは、2007年11月に始めた啓光学園中学校・高校を有する学校法人啓光学園との一体運営だ。常翔学園はグループ校を増やして学生・生徒数を増加させたい、啓光学園は少子化による厳しい情勢下において大学との連携によるメリットを得る、という互いの考えが一致した。連携に伴い、法人名は常翔啓光学園に、校名は常翔啓光学園中学校・高校に改称された。
　学校法人常翔啓光学園がある大阪府枚方市は、6つの大学を擁する府内有数の学園都市として「関西文化学術研究都市」に属し、教育研究活動の強化に取り組む。この連携により、枚方市内では初めての中高大一貫教育が実現した。竹内脩市長は「連携を機に啓光学園中学校・高校がさらに教育充実を図ることは、市にとっても大きな弾みとなり、また地域の発展や活性化にもつながる」と、期待の言葉を寄せる。
　この連携により、常翔学園グループ全体の学生・生徒数は2万1600人となった。今後は、常翔学園高校、常翔啓光学園高校は共に、国公立・難関私立大に多数の合格者を出す「“超”進学校」をめざす。坂口理事長は、「良い意味での競争関係を築いていきたい」と意気込む。両校の教育力の向上には、高大連携を存分に生かす考えだ。進学コースの生徒が大学の設備を利用して理科系の科目を学べる制度を整えるほか、大学教員による出張講義なども予定している。
　現在、常翔学園高校を対象としている３大学への進学時の優遇措置は、2009年度入試から常翔啓光学園高校にも適用される。「国公立・難関私立大学にも進学できる力を持った生徒を受け入れたい。両校の進学校化は学力の底上げをもたらし、入学者の質の保証につながる」と、坂口理事長は期待する。
　高大連携に中学校を絡めた一貫教育は、今後の課題だ。常翔啓光学園の改革プロジェクトに職員を派遣し、経営のノウハウを提供するなど、質の高い中高大一貫教育を見据えたグループ内の体制を整備する。

　グループ内の一貫教育を縦軸とすれば、外部との連携は学園運営の横軸に当たる。外部にも積極的に目を向け、大阪工業大学は東京理科大学と、学問的な注目が高まっている知的財産に関する分野で連携している。また、広島国際大学も中国地方の大学との連携を模索している。
　若者の「理工系離れ」への対策にも取り組む。2008年４月に大阪工業大学の大宮キャンパスに開所した「モノラボ（ものづくりセンター）」では、グループ内の中学校・高校、近隣の高校から生徒を招き、モノづくりの楽しさを教える講座を開く。創立90周年事業の一環としては、2008年度、全国の小・中学生、高校生を対象に、未来の社会、ロボット、発明品、建物など、「作ってみたいもの」を書いた作文を募集している。優秀作品のうち数点は学内で製作し、応募者の夢を実現させる計画だ。
　また、卒業生の就職支援や社会人教育を担う「大阪センター」をオープンさせた。大阪工業大学知的財産専門職大学院のサテライト教室の開設や、大阪都心部での就職活動のバックアップなどを行っている。
　坂口理事長は、「一人ひとりの教職員に対し、国内外の情勢に目を向けて、今後、大学が進むべき方向性を熟考するように言っている。常に大局的な視点を念頭に置きつつ、現在、必要な施策を充実させて足元を固めていきたい」と、今後の改革への意気込みを語る。