専門外の科目も幅広く学ばせ
豊かな人間性と高い倫理観を育成

　筑波大学の教養教育の再構築は、2007年度に策定した「筑波スタンダード」の延長線上にある。学士課程における教育の達成目標と改善の方策を明示した教育宣言だ。「人間としての可能性を知の拠点つくばで拓く」をモットーに、全学の学士課程全体の教育方針と、学群・学類ごとの「教育目標」「教育内容・方法」「達成すべき水準」「教育の質の保証」を示した。
　それまでの筑波大学の教養教育はくさび形カリキュラムで、共通科目（総合科目、外国語、情報処理、国語、体育、芸術）、専門科目と関連科目（他学群・学類の科目）を相互に連携させていた。このうち「総合科目」は教養科目として各学群・学類に設けられ、６単位まで自由に履修できるシステムだった。専門外の科目を学んで視野を広げたり、専門に隣接する分野から学際的な視点を身に付けたりしてほしいというねらいがあった。
　しかし、現実には、教員の意識は専門教育に偏り、他学群・学類の科目の履修を熱心に指導することはあまりなかった。教育企画室長の石田東生氏は、「各学群・学類の筑波スタンダードを見ると、教養教育に触れている個所はほとんどない。あらためて教養教育に対する教員の意識の低さを感じた」と指摘する。
　学生の意識も同様だった。総合科目の履修状況を調べると、専門外の科目を広く学び視野を広げてほしい、という大学の思いとは裏腹に、専門分野の科目ばかりを履修する傾向にあった。
　これを是正するため、2008年４月、教育企画室が中心となり、「教養教育の理念と目標」を策定した。目標は、（１）専門教育を支える幅広い知識の構築、（２）専門人・社会人としての高度なコミュニケーション能力の育成、（３）専門に偏することのない豊かな人間性と高い倫理の涵養（かんよう）、（４）社会に応える目的意識の形成、の４つだ。
　併せて、全学的な教養教育の再構築を進めるために教養教育機構を設置。同年９月、「筑波スタンダードに基づく教養教育の再構築」が教育ＧＰに選定された。現在、教養教育機構は、2011年度に新たな教養教育を全学で実施するという目標に向けて、カリキュラムやインフラの構築、組織の整備などを急ピッチで進めている。