高大連携は、1999年の中央教育審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」で、推進の方向性が明確に打ち出されて以来、さまざまな工夫がなされてきた。主な取り組みには、(1)高校生による大学の授業の聴講、(2)大学教員が高校に出向く出張講義、(3)推薦入試・AO入試等による合格者を対象とした入学前教育、が挙げられる。
大学と連携協議会を設置する高校は、2006年度には590校に上った。これは、全国の高校の1割超に相当する。また、教育委員会や高校が大学と協定を結び、高校生が大学で一部の授業を学べるようにしたうえで、高校の単位として認定するという取り組みも定着しつつある。高校生が大学の科目等履修生、聴講生、公開講座受講といった形で授業に参加する取り組みは、1999年度は15校だったが、2006年度には991校(国立3校、公立789校、私立199校)と、急増した。高速回線により高校と大学を結び、遠隔授業を行う自治体も出ている。
しかし、過去に取り組まれた高校と大学の連携実績が、高校教育に十分生かされていない点を課題とする声も強い。さらには、入試による入学者の学力水準の担保や、大学進学希望者の学習意欲の喚起・指導の困難化を背景に、高大接続は新たな段階に入っているといえる。
2008年の中教審の「学士課程教育の構築に向けて(答申)」では、国の支援施策として、高校との接続の改善が取り上げられた。その方策はおおむね次の4点にまとめられる。
(1)推薦入試やAO入試等について、その基本的な留意点を明確化して周知する。
(2)入学者受け入れ方針の具体化・明確化に向けた取り組みを促す。
(3)高校段階の学力を客観的に把握し、高校の指導改善、大学入試、大学の初年次教育に広く活用する仕組みの検討(『高大接続テスト(仮称)』の研究促進など)。
(4)大学における初年次教育等の充実に向けた支援。
これらの支援施策をふまえて、めざすべき「高大連携」とはどのような施策なのか。その施策は、自学の教育力にとってどのような意味を持つのか。それらを明確にしなければ、効果的な連携はできないだろう。
さらに答申では、初年次における教育上の配慮や高大連携は、いまだに散発的な取り組みにとどまっているため、さらなる普及・深化を図ることが必要だと指摘している。
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