指導変革の軌跡 埼玉県川口市立 県陽高校「進路指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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厳しい問いかけにより生徒の「覚悟」を試す

 進路の考え方が未熟な生徒に対しては、教師は面談でときには厳しい言葉を投げかけ、再考を促す。実力以上の進学先を希望する生徒には「今の成績では無理」とはっきり伝え、漫画家や芸能人になりたいという生徒がいれば「どんな努力をしているのか」と徹底的に問いかける。
  「憧れやイメージだけで進路を考えている生徒は、現実を知りません。そのような生徒には、現実的な数値を見せます。トリマー志望ならどのくらいの就職口があるのか。芸能人志望なら、過去卒業生で芸能人になった先輩がいるかどうか、あるいは、芸能界で成功する人の割合が非常に低いことなどを伝えます。そうすればもう一度考え直す生徒がほとんどです。生徒に厳しい言葉を投げ、現実を見つめさせることは、必ずしも夢をあきらめさせることではありません。教師がどんなに厳しく言っても、本当にやる気さえあれば、それを乗り越えていくはず。それだけの覚悟があるのかということを、生徒に問いかけているのです」(嶋津先生)
  逆に、実力があるのに、安易に専門学校を希望する生徒には、大学や短大を勧める。例えば、成績優秀者が「専門学校で動物看護を学びたい」と言ったときは、「どの程度本気なのか」「なぜ動物なのか。人の看護はどうか」と問いかけ、「その成績なら指定校でA大、推薦でB大で看護が学べる」と進学可能な大学を具体的に示して視野を広げさせ、自分の可能性に気付かせる。生徒の実力より少し上のレベルを見据えながら、実現可能な進路を絞り込んでいくのだ。
  2年次では12月と2月の2回、進路カルテを提出させ、進路を第3希望まで絞る。この時点で多くの生徒が現実に沿った志望を記入する。第1志望・経済学部、第2志望・福祉系学部など、分野を絞り切れていない生徒には、二者面談や進路ガイダンスで徹底的に指導する。絞り込みの甘いカルテは何度も書き直させ、更にガイダンスは教育系、医療・福祉系など学問ごとに内容を絞って行い、学部・学科選びの参考にさせる。「秋の修学旅行終了後から2年次末までが勝負」と嶋津先生は強調する。
  3年次の進路カルテは9月までに4回提出させるが、2年次までに十分考えて提出しているため、大きくずれることはない。指定校推薦入試の基準やAO入試の内容に合わせて志望順位を入れ替える程度だ。9月の推薦会議までには、進学希望者のほとんどが志望校を確定している。


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