変わり始めた高校の英語教育
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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a round-table talk on SELHi
指導法における課題

4技能を統合的に扱う授業がいつしかアウトプット偏重に陥っている場合も

吉田 授業実践を見る中で、気が付いた課題もいろいろありました、私が気になったのは、生徒に話をさせようという意識が強すぎるのではないかということです。これまであまり力を入れてこなかったスピーキング、そしてディベートなどに注力したいという熱意はよく分かりますが、そこに集中しすぎのような気がしました。英語を使った活動には、リスニングやリーディングといった受動的な力も当然必要です。これらの力もきちんと評価してあげないと生徒はかわいそうですし、そこに目を向けていることが分かれば、生徒にとっても励みになるはずです。
金谷 もっと生徒に目を向けた授業であってほしいと思うことはあります。先生は英語をたくさん使って生徒に話をしているのだけれど、生徒がどうも分かっていない。でも、先生は英語を話すことに一生懸命になっていてそれに気が付いていない。そういうシーンも、まだまだ目にします。
金森 授業の中に多様な活動が増えているのは良いことなのですが、一つひとつの活動の目的を生徒に明確に伝えていないため、今ひとつ効果が上がっていないこともあるようです。何のための活動でどんなことに気を付けて取り組まなければならないのか、生徒に理解させておくことは重要です。シャドーイング(※1)をやるのなら、どこに気を付けながら読むのか、意味を考えずにただ聞こえてくる音声を追うのか、プロソディー(※2)まで意識して真似るように読むのかなど、前もって知らせるだけで取り組みの内容と成果は変わります。現場の先生にとって最も大切なのは、授業で生徒を育てることなのですから、セルハイ研究を行う中でも、そのことをしっかりと意識しないと、今度は「研究のための研究」に陥ってしまう恐れがあります。
金谷 ティーチングという技というか、教え方の手駒をもっと先生方が身に付けられる機会も必要でしょうね。高校の場合、教員養成系以外の学部出身者の先生が約8割いるのですから、特に若い先生が教え方を学ぶ研修制度をもっと充実させる必要があると思います。4技能を総合的に使う指導、と口で言うのは簡単ですが、実践的な指導法を知らないと教えることなどできませんから。
※1)聞き取った英語のすぐ後について声に出し、影のようについていく練習のこと
※2)強弱、抑揚、感情、音調、イントネーションなどのこと

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