未来をつくる大学の研究室 地震工学
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研究テーマと業績
漠然とした不安を取り除き、必要な対策を具体的に市民に提示

 私たちは、いつ地震が起こるかは今のところ予測することができません。しかし、ある都市の周辺にどのような地震が起こり、生じた波動がどのように伝播し、更に地盤構造によってどのように影響されて地面がどう揺れるかは、定量的に算定できるレベルに来ています。更に、地震動が建物を壊すメカニズムについては、近年までわかっていませんでしたが、1995年の兵庫県南部地震(※4)以来、物理的なモデリングが急速に発達し、学問的にもずいぶん進歩しました。地震が発生した際、どの地域でどんな高さ、どんな工法の建物が被害を受けたかを調査し、設計上の想定値と実際の建物の被害を照らし合わせていきます。そうして、今の耐震基準や建築基準の問題点を明らかにしてきたのも研究の一つです。

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写真1 川瀬教授が現在、代表を務める21世紀COEプログラム「循環型住空間システムの構築」では、再利用率の高いレンガ造りの実験棟で研究中。レンガをボルトとナットで組み上げるこの工法は、極めて高い耐震性を兼ね備えている。

  我々の研究は、観測と数値計算、そしてシミュレーションが三位一体となって進みます。データを収集してモデルをつくり、シミュレーションする。合っていればモデルは正しく、今後の予測ができるようになる。合理的に建物を設計するなら、その場所でどんな揺れが起きるのか、地盤特性を調べて正確にシミュレーションしなければなりません。もちろん、地面の揺れだけでは不十分で、建物についても、観測、数値計算、シミュレーションを進めます。
 最終的には、全国のありとあらゆる建物が壊れるとすれば、どんな地震でどんなプロセスをたどるかをシミュレーションすることが目標です。ある都市における地震の揺れをシミュレーションするときも、その都市にはどんな高さ・工法の建物がどの地域にどれくらいあり、どれくらいの被害が出て、それを復旧するのにどれくらいのお金がかかるのかまで予測できるはずです。更に、今の状態のまま成長した都市と、逆に、耐震基準を厳しくした街づくりを進めた都市とでは、10年後、20年後どんな違いが生じるか、時間軸を加えた予測も視野に入れています。社会情勢や人口移動なども考慮した4次元の予測が目標です。

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写真2 建造物の揺れを調べるための振動計。研究室には十数台の振動計があり、福岡、高知などで教授、学生たちがこの振動計を使って調査を行った。
用語解説
※4 兵庫県南部地震  1995年1月17日、兵庫県淡路島北部を震源地に発生したマグニチュード7・3の地震。6434名の死者を出した阪神・淡路大震災の原因となった。

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