私の研究例を挙げてみましょう。以前、アメリカの社会学者が会話の進め方の性差に関する論文を発表しました。皆さんも経験があるかもしれませんが、会話の途中で相手の話に割り込んだり、同意を求められているのに沈黙したりすると、会話のリズムが崩れますよね。その論文では、男女間の会話では男性がリズムを壊すことが多く、それは会話の主導権が常に男性側にあるのが理由とされていました。そのため、男女が同等に話しているようでも、実際には女性の意見は反映されにくいとも分析されていました。この論文には、多くの日本人学者も賛同しています。
しかし、私はこの論文を読んだときに「変だな」と疑問に感じました。まず、日本人とアメリカ人の会話のスタイルは異なりますから、仮にアメリカでは事実でも、それが日本に当てはまるとは限らない。更に言えば、会話の主導権は、単純に性差で決まるのではなく、地位や立場などの多様な条件が関係しているのではないかと推測したのです。 |