指導変革の軌跡 福島県立磐城高校
VIEW21[高校版] 新しい学校再生のパートナー
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部数が限られた冊子を生徒にいかに活用させるか

 教師の指導力の向上には一定の成果を上げている『大学入試問題研究』だが、活用面で課題がある。半谷先生は、「生徒に1冊ずつ配付すれば活用度が高まるのは確実ですが、コスト面で発行部数が限られているのが現状」と残念がる。自宅への持ち帰りを禁じているため、生徒が冊子を手にするのは休み時間や放課後に限られる。配付したばかりのころは多くの生徒が取り組むが、時間が経つにつれて手に取る生徒が少なくなる。小川先生は、「生徒の自主性に任せるだけではなく、授業で積極的に活用したり、難関大を志望する生徒向け課外のテキストとして編集し直して使用するなど、すべての生徒が積極的に活用できる仕掛けが必要」と強調する。
 そこで、07年度から『大学入試問題研究』の活用促進のため、1・2年生は『羅針盤』、3年生は『受験者必携』を活用する。前者は新入生のために高校での過ごし方や各教科の学習法を教える冊子で、後者は受験を間近に控えた3年生に入試の流れや制度を理解させることが目的だ。その冊子に東北大の数学と英語の入試問題・解答・解説を抜粋して掲載している。早期から進路意識を高めると同時に、『大学入試問題研究』に目を向けさせることが狙いだ。
 今後は冊子全体をPDFファイルなどのデジタルデータにし、校内のパソコンでいつでも見られるようにすることも検討中だ。「データ化によって、大学別、教科別で問題を検索できるようになります。工夫次第で冊子の活用の可能性はまだあると思います」と、渡辺先生は話す。
 半谷先生は「教師の指導力向上の面でも、改善の余地はある」と指摘する。
 「伝統校の中には、若手教師に校内模試の作成を任せ、何度もつくり直させることで指導力の向上を図っている学校が多いようです。本校でも、掲載前に教科内で検討して、一定のレベルに達していないものはつくり直させるような指導が必要だと感じています。教師同士がシビアに意見を交換し、お互いを高め合っていける環境ができれば、それこそが本校の強みになると思います」(半谷先生)
 07年4月、福島県教育委員会は6つの教育的取り組みを定め、県下全校に普及させる事業を始めた。その一つに、同校『大学入試問題研究』が選ばれた。これを機に同校の取り組みは更に発展していくだろう。

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