特集 「自立心」を育てる進路学習
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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これからの進路学習

「なりたい自分」だけを 追求しても成長はない

 進路学習で大切なのは、さまざまな体験を通して生徒の志を育て、社会への興味関心を引き出し、将来へ歩み出すための土台を築くことです。その土台をつくる役割を果たすのが「F―プラン」だと考えています。
 では、そのために、どのような工夫が必要なのでしょうか。職業調べや学問研究も、ある程度は必要だと思います。しかし、それ以上に大事なのは、生徒に「今の自分」と「なりたい自分」の両方を意識させることだと思います。子どもたちが将来を考える時、今の自分を否定してから出発することはできません。それがどんなに嫌な自分であろうとも、今の自分を見つめるところから始めなければ、理想の自分を描いたところで、そこに到達することはできません。理想と現実の間を行ったり来たりする中で、子どもたちの心は激しく揺れ動く。揺さぶられ、葛藤する過程そのものが、子どもの成長にとって最も大切です。だから、現実と理想の両方が必要なのです。
 しかし、今のキャリア教育は「なりたい自分」にばかりスポットが当てられているように思います。興味関心だけを追求していたのでは、葛藤は生まれませんし、あまりにきれいな将来像を描いてしまうと、いざ壁に突き当たった時、立ちすくんでしまうということになりかねません。
 土台をしっかり築くには、興味関心のある職業を調べるだけではなく、働く意味そのものを考える機会を生徒に与えるべきです。「F―プラン」でも、1年次の職業に関する時間を増やし、働くことの意味を徹底的に考えさせて生徒の意識を揺さぶる内容に変えていければと考えています。

「ルーティンに一工夫」で 進路学習の効果を高める

写真 教師の多忙感が増す中で、取り組みを増やしたり、今ある取り組みを大幅にリニューアルしたりするのは現実的ではありません。総合学習だけではなく、学校のあらゆる取り組みを進路学習の観点から見直すことが重要だと思います。今ある取り組みを少し視点をずらして見直すことが大切で、私はこれを「ルーティンに一工夫」と言っています。
 例えば、学校行事は立派な進路学習です。目標に向かって進む中で、時にはうまくいかないこともあるでしょう。その葛藤の過程で、人間関係をつくり、共同作業の大切さを知る。その際、生徒が主体的に動き、考える機会や葛藤する場面を、教師が意図的につくり出す配慮も必要です。学校内の取り組みのすべてが、生徒の自立に向けた学習につながっているという意識を、教師一人ひとりが持つことが大切です。
 今は、中学校でも職場体験学習などが進み、生徒は職業の種類に関してはある程度の知識を持っています。だからこそ高校では、「何のために働くのか」を突き詰めて考えることが必要です。そんな機会は、ひょっとしたら高校時代が最初で最後かもしれません。3年後、生徒が将来に向けて自ら歩み始めるために、我々がすべきことは何か、改めて考える時が来ているのではないでしょうか。

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