指導変革の軌跡 鳥取県立鳥取中央育英高校「小中高連携」
VIEW21[高校版] 先生方とともに考える 新しい進路指導のパートナー
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独自の学び直し教材で基礎学力定着を目指す

 09年度には、同校独自に基礎学力の定着を目指した取り組みを始めた。高校での学びに最低限必要な中学校レベルの国数英の内容をまとめた冊子『真の育英生となるために』(図2)だ。同校入学予定者へ合格者登校日に配布し、入学までに各自で一部取り組ませる。入学後はオリエンテーション合宿の教材として1教科5時間をかけて指導。合宿後の1週間でも理社や保健体育などの授業を調整して特別時間割とし、1日2時間、冊子の問題演習に取り組ませる。それ以降も適宜、各教科で活用し、最初の定期考査では冊子からも出題し、定着度を測る。
 特にページを割いたのが現代文だ。文の成分、品詞の種類、活用の方法、接続語や指示語まで幅広く網羅した。その狙いを国語科の齋尾博幸先生は次のように述べる。
 「本校の生徒の弱点は文法です。授業をしていて、読解力が弱いのは、口語文法が理解できていないからだと分かり、現代文の読解力を身に付けさせる必要があると考えました。『中学校では分からなかったけれども、勉強し直してみると意外に簡単でした』という生徒も多く、分かったという体験が国語に対して前向きに取り組む姿勢につながっています」
読解力向上は他教科にも好影響を及ぼした。
 「数学では、文章題に取り組む姿勢が積極的になっています。文の意味を理解したり、問題の意図を読み取ったりする楽しさが、だんだん分かってきたようです」(前田先生)
 冊子は毎年改訂予定。09年10月に開いた次年度用の改訂会議には、県内中部地区の中学校から教師を招き意見を聞いた。難易度や内容、配列、量など、中学校の視点からアドバイスを得ることで、より効果的な学習教材にするためだ。
 「向ヶ丘レインボープラン、学び直し教材、どれも今の形がベストとは思っていません。小中との連携をより深めて取り組みを改善し、学校力を高め、教師一人ひとりの指導力向上に結び付けたいです。学校が頑張れば地域は応援してくれます。しかし、学校に元気がなければ、地域から背中を押してもらうことは出来ません。高校が小中学校や地域と一緒に歩んでいくことで、更に高い教育効果を生み出せるのではないでしょうか」(浪花校長)

図2 『真の育英生となるために』(抜粋)

図2:『真の育英生となるために』(抜粋)
国語57ページ、数学12ページ、英語20ページと、全体の6割が国語で占められる。なかでも、「文法の学習」は50ページにわたり、徹底的に基本を身に付けさせる内容となっている

*今回のテーマに関連する過去の記事:

→ 2009年9月号

地方公立高校の挑戦:「広島県立加計高校芸北分校」


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