大学生の学習・生活実態調査報告書
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授業の経験

 これまでの授業の経験をたずねたところ、毎回コメントを課す授業や少人数の演習形式の授業が6割を超え、グループワークやディスカッション、教員と学生とのコミュニケーションの機会などを取り入れた授業はおよそ半数にのぼった。少なからず、学生の主体的な参加を促す双方向型授業が工夫されていることが明らかになった。

Q
あなたはこれまで大学で、次のような授業を経験しましたか。それぞれについて、あてはまるもの1つをお選びください。
 図3-1-5は、大学生がこれまで経験した授業についてたずねた結果である。ここでは授業の内容だけでなく、授業形態や授業方法も含めて詳細にたずねている。

 まず、「学期末以外にもレポートが課される授業」が82.7%(「よくあった」+「ある程度あった」の%、以下同)で最も多く、「学期末以外にもテストが課される授業」(78.2%)もほぼ同様の8割程度で、「毎回、授業内容に関するコメントや意見を書く授業」(68.6%)は7割近い値を示した。かつてのような定期試験や学期末レポートの一発勝負型ではなく、成績評価の対象となる複数の課題を用意した授業が多いことが明らかである。また、約7割の学生が経験している「授業内容に関するコメント」は、出席の確認や平常点に利用できるだけではない。学生からの質問への応答など、教員と学生とのコミュニケーションを図り、授業理解を深めて知的動機づけを高めるうえでも有用といえる。

 「少人数のゼミ・演習形式の授業」の経験は62.9%であり、このうち「よくあった」という回答は21.6%であった。図には示していないが、この項目で「ほとんどなかった」と答えた比率が18.4%であるところをみると、8割以上の学生がなんらかの形で少人数授業を経験していると考えてよいだろう(巻末の基礎集計表を参照)。

 図3-1-5からは、こうした少人数授業のなかで実践しやすいアクティブ・ラーニング(能動的学習)を取り入れた授業が工夫されていることも確認できる。「グループワークなどの協同作業をする授業」(53.3%)、「プレゼンテーションの機会を取り入れた授業」(51.0%)、「ディスカッションの機会を取り入れた授業」(46.7%)、「実験や調査の機会を取り入れた授業」(45.1%)など、約半数の学生が少なからずグループワークやディスカッションを経験している。さらに、「教員と学生が授業時間内にコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」(46.1%)、「学生の意見や授業評価の結果を反映させた授業」(43.8%)、「提出物に教員からのコメントが付されて返却される授業」(40.7%)、「インターネットやメールなどを利用して、授業以外でも教員や学生とコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」(40.6%)といったように、4割以上の学生がこうした双方向的な授業がある程度以上あったと回答している。このように、授業中、また授業外でも、学生とコミュニケーションを図るように努め、学生の意見を授業に活かそうとしている大学教員が少なくないことが理解できる。

 なお、大学生の学力・学習意欲・目的意識の多様化にともなって近年導入されるようになってきた「高校で勉強する教科の補習授業」(32.1%)、「自分の進路や適性について考える授業」(30.9%)、「大学での勉強方法を学ぶ授業」(28.7%)などは、本調査ではいずれも3割程度の回答にとどまった。
図3−1−5 授業の経験(全体)
 次に、表3-1-10に学年別にみた授業の経験を示した。1年生から4年生にかけて比率が順次増大していく項目は、19項目中7つであった。また、学年とともに順次増大はしないものの、1年生の値が最も低く、4年生で最も高くなる項目は3つあった。およそ半数の項目が学年の上昇とともに経験率が増大しているということである。当然のことながら、学年が上がるにつれて経験する授業数は増えていく。また、カリキュラムの順序性も関係して、履修する授業に違いも生じてくる。調査の結果、1年生と4年生で最も大きな差がついたのは、「少人数のゼミ・演習形式の授業」(「1年生」51.5%<「2年生」57.5%<「3年生」68.6%<「4年生」74.0%、以下同)であり、次に「実験や調査の機会を取り入れた授業」(35.3%<45.6%<49.2%<50.1%)であった。一般的に高学年から本格的な専門のゼミや卒論指導などが始まることを考えると、この結果にはうなずけるであろう。
 
 さらに、少人数授業の機会が増えていくにしたがって、アクティブ・ラーニング(能動的学習)を用いた授業経験の比率も上がっていくことが考えられる。「ディスカッションの機会を取り入れた授業」(43.0%<46.5%<47.8%<49.1%)、「教員と学生が授業時間内にコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」(42.8%<43.2%<48.0%<50.6%)など、差は小さいが学年とともに比率は順次上がっている。それ以外にも、学年とともに順次増大してはいないが、1年生と4年生で差が大きいものとして、「プレゼンテーションの機会を取り入れた授業」(「1年生」45.2%<「4年生」54.2%、9.0ポイント差、以下同)、「教室外で体験的な活動や実習を行う授業」(27.1%<36.4%、9.3ポイント差)が挙げられる。

 反対に、学年の上昇とともに比率が下がっている項目も2つあった。「大学での勉強方法を学ぶ授業」(「1年生」36.2%>「2年生」32.1%>「3年生」23.8%>「4年生」22.5%、以下同)、「高校で勉強する教科の補習授業」(36.1%>34.3%>30.5%>27.5%)がそれである。こうした学習技法を学ぶ授業や補習授業は主に1年生に配置されるため、記憶に新しい低学年のほうが高い比率を示すとも考えられるが、特に学習技法の授業などは最近になって広がってきたことの表れとみることもできる。
表3−1−10 授業の経験(全体・学年別)
 つづいて、学部系統別の違いを指摘しておきたい。表3-1-11によると、学部系統による差異が大きく、それぞれの専門分野のカリキュラム構造や教育方法の違いが反映されているといえる。とりわけ、「理工」「農水産」「保健その他」といった理系学部と、「人文科学」「社会科学」「教育」といった文系学部に大別される。

 第1に、理系の学部はいずれも、「実験や調査の機会を取り入れた授業」が全体平均に比べて著しく高い結果を示した(「理工」64.4%、「農水産」70.4%、「保健その他」71.3%)。これに対して、「人文科学」(35.4%)、「社会科学」(29.7%)ではきわめて低い値であった。しかし反対に、「少人数のゼミ・演習形式の授業」に関しては、理系学部の値は顕著に低く(「理工」46.0%、「農水産」47.2%、「保健その他」43.8%)、「人文科学」(71.2%)、「社会科学」(73.4%)は高い値を示した。また、理系学部では「高校で勉強する教科の補習授業」の比率も高い傾向にあり(「理工」41.3%、「農水産」46.4%、「保健その他」44.8%)、理系の専門教育にとって、高校までの知識の習得が不可欠であることがうかがえた。

 第2に、文系学部のなかでも「人文科学」と「教育」では、全体平均よりも高い項目がいくつか共通してみられた。「毎回、授業内容に関するコメントや意見を書く授業」(「人文科学」80.2%、「教育」89.6%、以下同)、「教員と学生が授業時間内にコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」(56.6%、58.8%)、「上級生や下級生と授業時間内にコミュニケーション(議論・質問・対話など)がとれる授業」(25.7%、32.9%)、「グループワークなどの協同作業をする授業」(62.0%、73.4%)、「ディスカッションの機会を取り入れた授業」(56.2%、67.8%)、「プレゼンテーションの機会を取り入れた授業」(58.6%、64.3%)が、これに該当する。要するに、教員と学生および学生同士のコミュニケーションを促進するような授業、学生が自分たちで調査研究して発表したり、議論したりするような授業が、「人文科学」と「教育」で高い比率となっているのである。とりわけ、「教育」はいずれの項目も10ポイント以上上回り、著しく高い値が特徴的といえる。これに対して、「保健その他」を除いた理系学部では、これらの項目は全体平均より低い傾向にあった。「保健その他」の場合は、医学部などでPBL(Problem-based Learning=問題解決学習)を導入する大学が多いことから、おそらくグループワークやディスカッションの値が高くなっているものと考えられる。

 第3に、「教室外で体験的な活動や実習を行う授業」は、文理を問わず、「農水産」(67.2%)、「保健その他」(59.0%)、「教育」(60.9%)において顕著に高い結果を示している。職業実践や現場との結びつきの強い分野では、こうした体験活動や実習が重視されていることがみてとれる。

 この他、「人文科学」では「語学以外の授業で、外国語で行われる授業」の値が全体より高く、「教育」では、「学期末以外にもテストが課される授業」の比率は低いが「学期末以外にもレポートが課される授業」の比率は高いなど、各学部系統の特性がうかがえる結果となった。

 全体をまとめれば、その教育効果のほどは別としても、授業のなかで学生の主体的な参画を促すための授業内容・授業方法の導入がある程度進んでいることが、学生自身の授業経験の回答結果から確認できる。とりわけ、文系の学部系統、なかでも「教育」系ではこうした取り組みが顕著である。もちろん、こうした傾向がさらに広がるべきだという見方もできるだろう。しかしながら、ここで挙げたような授業形態・授業方法を、一律にどの授業でも適用することが望ましいとはかぎらない。すでにみてきたように、文系学部と理系学部での授業の差異は明らかである。また、同じ文系学部、理系学部のなかでも各学部系統によって習得すべき知識・技能、育成すべき能力が異なることはいうまでもない。専門分野によって教えるべき内容が異なれば、それぞれの授業の目的や内容に照らして、最も適した授業形態・授業方法を検討することが重要だといえるだろう。
表3−1−11 授業の経験(全体・学部系統別)
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