第4回学習基本調査・中学生版
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4. 今後に向けて 〜格差ではない多様化の実現のための課題

 前述したように、2001年からの5年間で、中学生の学習に向かう姿勢や考え方は、まじめになったし、学習するようになった。一方で、地域・家庭間格差や成績差が大きいこともわかった。第4回の調査対象者は、公立中学校に通う生徒たちだけである。「2.2001年以降の中学校教育をめぐる動き」で概観したように、ここ数年で中学校の多様化は非常に進んでおり、多様なタイプの中学校に通う生徒たちは、今回の調査には含まれていない。公立の中高一貫校はますます増えていく計画になっているし、東京都では中学生のおよそ4人に1人が私立学校に通っている。公立中学校に通う生徒だけでもこれだけの差がみられるのだが、公立中高一貫校や私立中高一貫校に通う生徒と公立中学校に通う生徒とでは、学習に向かう姿勢や考え方は非常に大きく違っているだろう。公立中学校間でも、学校選択制が広まっていけば、今までのような「どこへ行っても同じ教育が受けられる公立中学校」ではなく、「あそこはこういう教育が受けられる公立中学校」へと変わっていき、学校間の差がもっとはっきりしてくることだろう。同じ公立中学校のなかでも、選択教科の授業時数が増えてきたことで、ある教科をたくさん勉強する生徒と少ししか勉強しない生徒が出てくることになる。習熟度別に選択授業を選ぶことになれば、生徒たちは制度的組織的にグルーピングされ、成績差が可視化されていくことになるだろう。

 中学校が多様化することで中学生の学習に向かう姿勢や考え方に違いが生じること自体はいけないことだとは思わない。しかし、中学生が置かれる環境の違いで生じる学力の差によって、十代の早いうちから将来の進学希望や職業希望にまで大きな格差が生じてしまってはいけないのではないだろうか。第4回の結果を踏まえたとき、中学校がこれからますます多様化していくにあたり、配慮していくべきだと考える点が5 点ほどある。その5点を示して本章のまとめとしたい。


(1) 一定の学力水準の維持


 中学生の学習に向かう姿勢はまじめになったし、学習するようになった。しかし、それは第一に量が増えたというだけのことであり、第二に平均的には増えているが、同時に偏差も広がっているのである。基礎・基本を中心にした「確かな学力」とはいったいどの水準なのかを明確にすることもさることながら、学力観も大きく変わりつつある。学習させる量を増やすだけでなく、望ましい学力とは何かを模索しながら、一定の学力水準を維持するために必要な学習環境の整備と中学生の学習に向かう姿勢づくりを図っていく必要があるだろう。

(2) 「受け身」「学校に閉じている」の解決


 中学生の学習に向かう姿勢はまじめになったし、学習するようになった。しかし、そのまじめさは受け身なものだったし、その学習は学校に閉じているものだった。学力低下という批判にはある程度応えられたものの、1990年代から取り組まれてきている新しい学び方や自ら課題をみつけてそれを解決していこうという姿勢は定着していない。また、身近な結果に振り回されて、学校の成績を上げることに直接は関係のない、社会勉強や生涯学習につながるような学習や、学校で学んだことをきっかけに深まった知的好奇心を満たすようなプラスアルファの学習をしていない。だが、おとなになったら、こういう姿勢や学習こそが大切になってくる。量の問題をある程度クリアしたら、今度は「能動的なまじめさ」や「学校から広がっていく学習」が身につくように、質の転換とその定着を図っていく必要があるだろう。
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