神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書

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第3部 社会関係資本

 第4章 中学生の高校進学における友人環境継続志向
       ―ジェンダー・人間関係・メリトクラティック指標に着目して―

熊谷 信司(東京大学大学院教育学研究科博士課程)

  <要約>
  • 進学先の高校は「同中」出身者が多く進学する学校がよいかどうかという「友人環境継続志向」には、現状での中学校での人間関係や自己認識という側面と、メリトクラティックな達成度合いや志向性という側面の双方がせめぎ合っている。
  • 上記の規定度合いの構造にはジェンダー差も大きい。
  • 友人環境継続志向は、将来観(職業観)や社会観とも関連を持ち、ある種のリスクを伴う部分もあるが、一方で「なんとかやっていく」ための資源としても解釈できる。
  • こうした分析を通じて、中学生・高校生をより連続したものとしてとらえていくこと、また、進路や移行という問題に際して、選抜的側面と生徒文化的側面の双方を統合的に考えていく必要性を提示する。

1. 問題設定

大多数の中学生にとって、中学卒業後には高校への移行が待ち受けている※1)。特に、今回の調査対象者はいずれも3年制公立中学校に通う生徒であるので、中学生たちは高校受験を通じて様々な高校へと進路が分かれていくことになる。

中等教育期を考えるにあたっては、こうした進路・選抜・配分という視点も重要であるとともに、中学生や高校生の日常生活にとっては、学校(クラスや部活動)や地域などにおける友人やピアグループの存在も重要である。ただ、これまでの研究では、友人関係に関する研究は、主として学校内における適応の問題、あるいは若者文化の接触にかかわる問題といった、生徒文化的な要因として扱われることが多かった。逆に言えば、中等教育期の進路という視点から見た場合は、あまり友人や人間関係という要素は大きな課題として検討されてはこなかった。しかし、友人関係はその後のライフコースにおいても、ある人が生きていく際の様々な諸資源や影響力の源泉となり得る。その意味では、友人関係を進路あるいは移行の問題として考えていくことにも一定の意義があるだろう。

とはいえ、これまでは工藤(2010)が指摘するように、中学生・高校生を連続してとらえるという視点が少なかった面もあるが、中学校から高校への移行は、中高一貫校や、事実上大多数の生徒が同じ中学校から同じ高校に進学するような地域を別とすれば、それまでの人間関係についても大きく変化が生じることも意味する。本稿ではこうした軸から、中学生たちが高校進学を考える際に、友人関係の継続ないし変革をどのように見ているかを検討し、中学生の進路をめぐる議論をとらえ直すことを目的とする。

〈注〉
※1 2008年度の神奈川県全体での中学生卒業者における高校進学率は、同年度の全国平均とほぼ同じ97.8%である(文部科学省2009)。

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