第2回子ども生活実態基本調査報告書
   PAGE 4/6 前ページ 次ページ

3 メディア世界を生き抜く子どもたち
  ―「サイバー・キッズ」の時代へ―    古賀 正義

メディア接触が拡大・多様化する中学生時代;充満するゲーム、テレビ、マンガ、そしてケータイへ

 中学生になると、小学生のころには男子中心に行われてきたテレビゲームの利用がしだいに性別を超えて拡大していく。ゲームで遊ぶ時間の平均が男子で1時間半を超える(92.6分)のと類似して、女子でも利用時間が1時間に迫っていく(58.6分)。高校生の平均利用時間がこれらより30分前後少なく、しだいに「ゲーム離れ」が進むことと対照的に、ゲームの利用ピークは中学生時代にあるといえる。とりわけ、中2生は80.3分ともっとも長くなっている(第2章 図2-1-28〜図2-1-29)。
 さらに中学生を細かく分析してみると、「ほとんどしない」中学生(23.6%)も「3時間以上」する中学生(11.8%)も、ともに小学生全体の割合より増えており、ゲーム利用層の2極化傾向がみてとれる。2004年調査の平均利用時間と比べると、中2生、中3生では20分程度も利用時間が増大しており、ゲーム機の進化やゲームソフトの多様化などもあり、中学生になると、ゲームの世界に「ハマる生徒たち」が一層多くなっていることがみとめられるのである。
 テレビ・ビデオ(DVD)の視聴時間にも同様の傾向がある。小学生の平均視聴時間が2時間に満たないのに対して、中学生の男女ともに2時間を上回っており、女子の視聴はさらに長くなっている(男子131分、女子139分)(図2-1-27)。「3時間以上」見るという長時間視聴者の割合も4人に1人を上回っている(28.4%)。ここでも中2生がもっとも長く視聴しており、平均2時間18分にも及ぶ。高校生になるとテレビの視聴時間も短くなっていき、男女とも1時間半程度まで減少するので、ピークはやはり中学生時代にあるといえる。
 塾通いや部活動の参加など、中学生には小学生・高校生と異なってメディアと直接接触できない時間帯が多々あるが、そのなかでこうした長時間利用や視聴の傾向がみとめられることは看過できない。中学生になると、自己意識や友人関係、興味・関心をいだく対象の変化などを伴って、家庭生活の中でメディア接触への強い指向性(広い意味での「オタク文化」)が拡大していくと読み取れる。
 こうした傾向は、「マンガや雑誌を読む」習慣とも共通している。中学生で、「よく読む」の割合は6割弱あり、小学生・高校生より10ポイント以上も高くなっている。さらに、高校生になると誰にも利用されるケータイも、女子を中心に中学生時代から拡大していく。中学生は、まさに「充満するメディアの世界」を生きているということができる。

変容する電子メディアの位置取り; 特別な学習機器から日常的な家電製品への「パソコン」の変化

 中・高校生になるにつれて、家庭内のパソコンは一層「インターネットで趣味や遊びのことを調べる」個人のツールになっていき、3人に1人以上がネットサーフィンを楽しんでいるとみられる(小学生42.0%、中学生67.1%、高校生72.8%)。「ホームページやブログを作る」割合も、中学生では14.9%もあり、2004年と比べ倍増している。「ゲームをする」も、2004年より減少したものの、中学生では3人に1人以上(39.5%)いる。いまやパソコンは娯楽や趣味のための日常的な家電製品となっている。
 反面、「文章を書く」や「絵を描く」、「学習ソフトを使って勉強する」といった学習機器としてのパソコン利用はあまり多くない。「文章を書く」を例にとれば、小学生16.2%、中学生12.9%、高校生21.0%となっており、どの学校段階でも4人に3人を上回る子どもたちが文章をパソコンで書く機会を持っておらず、2004年より10ポイント程度も利用が減少している。学校でのパソコン利用の割合が小・中学生では減少し、学校で「ほとんど使わない」という回答の割合が小学生で73.9%、中学生で77.7%にも及んでいる現状を勘案すると、機器やソフトの更新遅れなどを伴って、学習機器としてのパソコンの魅力が十分に伝わっていない可能性もある。
 「テレビやDVDを見る」といった利用も多くなるなかで(中学生では、2004年 16.5%→2009年 30.9%)、パソコンは一層「家電化」する傾向にある(図2-2-3〜図2-2-5)。これに伴って、中学生のほぼ3人に1人が家で「パソコンを3日以上する」(「週に5日以上」と「週に3〜4日」の合計、35.1%)と回答しており、高校生もほぼ類似した回答になっている(合計で29.9%)。2004年に比して、小学生のパソコン利用が減少している一方で、中・高校生では利用が一層増加する傾向にあるといえる(高校生では、進路多様校を中心に、学校でのパソコン利用も増加)(図2-2-1〜図2-2-2)。
 利用の実態は意識にも影響を与えていく。高校生では「パソコンがないと今の生活が不便になると思う」という回答が半数を上回っており(「とてもそう」と「まあそう」の合計で57.2%)、「パソコンをもっと使いこなせるようになりたい」という回答も8割弱、「パソコンを使うのが楽しい」も7割強と、パソコンの利便性への理解がきわめて高くなっている。同時に、利用のルールについても理解が深まり、「インターネットの使い方についてのマナーやルールを知っている」という回答の割合も6割強となっている(小・中学生もほぼ同様)。家庭の日常にパソコンは定着し、利用できて当たり前の電化製品になろうとしている(図2-2-6〜図2-2-8)。

「ケータイ文化」を生み出す社会的な背景;中学生、女子、大都市というファクターによる広がり

 携帯電話(ケータイ)は、小学生の4人に1人、中学生の半数が所有するようになった(小学生26.2%、中学生50.1%、高校生94.8%)。安心安全の問題やメール情報の共有などの点から、親たちも子どものケータイ所有をみとめる傾向が強まっている。一方で、中学入学時や高校入学時に所有率が上昇するのは、子どもたちのコミュニケーションや情報収集にとって、ケータイが欠かせない手段になっていることの現れでもある。
 実際、小学生では「家族にかける電話」の回答の割合が高く、7割を超え(「1〜2回くらい」から「51回以上」までの割合の合計、以下同様)、「家族に送るメール」も6割を超えている。家族とのコミュニケーション・ツールになっているのである。それが、中学生になると、「友だちに送るメール」の使用が9割弱となり、家族だけでなく友人関係を支えるツールとなっていく。 さらに、高校生になると、「友だちに送るメール」の使用が9割を超え、「インターネット」の利用も7割近くの回答率となって、情報ツールとしての有用性も増していく(図2-2-11〜図2-2-13)。
 意識の面でも、小学生が「携帯電話を使うのが楽しい」の回答の割合(「とてもそう」と「まあそう」の合計、以下同様)がほぼ7割、「携帯電話がないと今の生活が不便になると思う」が6割弱であるのに対して、中学生では「楽しい」が8割強、「不便になる」が8割弱と増加していく。さらに、高校生では「楽しい」が8割強、「不便になる」が9割弱と増える。「電話やメールがこないとさみしくなる」という回答も、中・高校生では4割以上あり、ケータイが日常生活における人間関係の起点になっている様子が読み取れる(図2-2-14〜図2-2-16)。
 しかしながら、ケータイによる友人とのコミュニケーションや「メル友」の広がり(狭義の「ケータイ文化」)には、一定の社会的背景が影響していくと推察できる。高校生になるとほぼ全員が所有するケータイも、中学校段階で、中1生43.0%、中2生50.4%、中3生57.1%と、学年に応じて拡大していく。中学生に限定すると、女子のケータイ所有率(56.4%)が男子より10ポイント以上も多くなっていて、女子の利用が先行している。さらに、大都市では中都市や郡部の地域よりも10ポイント以上も所有率が高くなっていて、都市的な生活スタイルとの連関がある。
 ケータイ文化への接近は、まずもってこうした特定の社会背景を有する生徒から進行していく特徴があると思われ、ケータイ依存などを考えるうえでも重要な知見といえる。

成績によって異なるメディア利用; メディアの利用方法やその理解に現れる格差(デジタルデバイド)の傾向

 2004年にもみられたことだが、学力(成績の自己評価や高校の入学難易度)と、ケータイやテレビゲーム、テレビなどのさまざまなメディア利用・利用意識とが、多くの項目で関連しているとはいいきれない。例えば、進学校の生徒たちでも、進路多様校の生徒たちと同様に、今日ケータイをよく使っているといえ、「友だちにメールを送る」ことにケータイを「ほとんど使わない」生徒の割合は、成績によらず1割未満にとどまっている。しかしながら、より詳細に「1〜2回くらい」使うライトなユーザー層と「51回以上」と非常に多く使うヘビーなユーザー層について比較してみると、そこには回答率の差が出ている。前者が、進学校18.2%、進路多様校10.8%であるのに対して、後者が、進学校5.2%、進路多様校19.0%となっていて、極度なメール利用の問題が進路多様校の生徒に多く存在することがわかる。
 同様に、ケータイ利用意識の面でも、「携帯電話を使うのが楽しい」や「携帯電話がないと今の生活が不便になると思う」といった項目では際立った成績による差がないが、「会ったことがない人と電話やメールでやりとりをすることがある」といった項目を比べてみると、中堅校や進路多様校の生徒で「する」という回答の割合が高くなっている。
 さらに、テレビゲームで遊ぶ時間についても、成績による差がある。小学生では、成績上位層の平均時間63.0分に対して、下位層は73.8分。中学生では、成績上位層61.7分に対して、下位層は90.5分。高校生では、進学校37.0分に対して、進路多様校64.2分となっている。成績の高い子どもは、テレビゲームを長時間しないといえる結果である。
 しかしながら、このことが成績上位層のメディア接触の少なさを意味しているかといえばそうとはいえない。小学生が家でパソコンを「週に1日以上」する割合は、成績上位層が43.6%であるのに対して、下位層は35.6%とやや低くなっており(中学生は、成績上位層・下位層とも差がなく、高校生は進学校が非常に高い割合)、「マンガや雑誌を読む」割合も、成績の高い子どものほうが若干高くなっている。
 このようにみると、単純にメディアに接触する頻度自体を問題視するのでは見えない事実がある。子どもたちがどのようにしていかなるメディアを利用するのか、どんなリスクを避けているのかを理解していくことがより重要である。いまやデジタル社会の有用性を的確に活用できる高い学力層の子どもたちが存在することを思うと、格差の存在(デジタルデバイド)を看過することなく、支援の方途を見出していく必要があるといえよう。
   PAGE 4/6 前ページ 次ページ
目次へもどる 調査・研究データ