都立専門高校の生徒の学習と進路に関する調査

    PAGE 1/4 次ページ

第1部 総論

 第2章 専門高校の今日的な課題

木村 治生(Benesse 教育研究開発センター教育調査課長)

本調査は、専門高校の生徒を対象としている。高卒者の労働市場の縮小や大学への進学者が増えていることから、専門高校は以前のように就職を前提とした進路指導だけでは立ち行かなくなっている。進路の多様化という点では、普通科進路多様校との共通する問題も多い。本稿では、職業教育の歴史的な変遷を概観することで専門高校の今日的な課題を明らかにする。

高校における職業教育の変遷

ここでは、専門高校の今日的な課題を明らかにするために、戦後の職業教育の変遷を簡単に振り返っておきたい※1

(1)隆盛期:高度経済成長まで
   (1970年代前半まで)

最初に、高度経済成長までの期間を概観しよう。

新制高校は、普通教育と職業教育の両方を行う完成教育機関として発足した。新しい制度をデザインする段階では、卒業後に進学するよりも就職する生徒のほうが多く、すべての生徒に職業教育を行う必要があるとされていた。同時に、大学進学者への配慮もあり、文部省(当時)は総合的な教育課程を有する高校の普及を目指す。このため、「総合制」は、「小学区制」「男女共学制」と並んで新制高校の3原則の1つとして重視された。しかし、「小学区制」や「男女共学制」が完全な実現をみなかったように、「総合制」の原則も徐々に崩れていく。普職の分離を大きく促進したのは、旧制中学校などの名門校の進学校化と、産業界からの働きかけによる職業教育の充実である。1950年代に入ると、国の経済成長に必要な産業人の育成が教育課題として認識されるようになった。職業教育の重要性が強調され、教育課程のうえで普通教育と職業教育を分割する政策がとられるようになる。

図1は、高校に在学する年齢の者が、どのような高校課程に在学しているかを示したものである。在学者数と進学率から、高校に進学しなかった者(非進学者)を算出し、合計を当該年齢人口として表した。ここからは、団塊の世代と呼ばれる第1次ベビーブーマーが高校進学を迎える1965年ごろまで、非進学者がかなり高い割合で存在したことがわかる。いわゆる「金の卵」と呼ばれた集団就職の若者たちも、このなかに入る。高校進学が、「当たり前」ではなかった時代である。1965年の高校進学者をみると、職業学科(専門高校)に在学する生徒が高校生全体のなかで4割を占めている。厚生労働省「職業安定業務統計」によると、1970年の高卒者の求人数は470万人余りで、求人倍率は7倍を超える売り手市場であった。このようななかで、図2に示すように職業学科(専門高校)は高い就職率を示しており、就職のための主要なルートとして位置づけられていた。中学生が選択する進路としてのステイタスは、低くなかったといえる。

図1:高校在学者数の推移(非進学者を含む)
図1:高校在学者数の推移(非進学者を含む)

図2:就職率の推移(学科別)
図2:就職率の推移(学科別)

〈注〉
※1  職業高校の変遷に関する記述にあたっては、堀内(2006)を参考にした。

     PAGE 1/4 次ページ
目次へもどる 調査・研究データ