都立専門高校の生徒の学習と進路に関する調査

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第2部 高校入学以前の状況と学習・進路/
第2章 専門高校の今日的な課題/高校における職業教育の変遷

(2)衰退期:安定成長からバブル好況期まで
   (1990年代半ばまで)

しかし、その後大学進学率が上昇し、中等教育が高等教育への準備教育の傾向を強めるにつれて、職業学科(専門高校)は「大学に進学しにくい」というデメリットの影響を受け、中学生の進学先としての魅力を失っていく。トーマス・ローレン(1988)が指摘するように、偏差値による輪切り選抜のなかで専門高校が大学に進学できない高校として相対的に下位に位置づけられるようになっていった。その結果、専門高校の生徒は学習に対する関心をもてずに非行化するなどの問題が顕在化し、普通科に進学できない者が進学するという傾向を強めた。

再び図1をみると、1975年から1990年にかけて当該年齢人口が増え、普通科の在学者数が5割も増加している。これとは反対に、職業学科(専門高校)の在学者数は1割減少し、高校生全体に占める比率も36.3%から24.9%に低下した。職業学科(専門高校)の需要がかなり縮小したとみることができる。学校経由の就職がまだ機能し、就職率は8割弱という高率を維持しているが、量的に拡大する普通科の生徒の大学進学率が高まったため、条件のよい就職先は少しずつ大卒者に侵食されていった。この間、高卒者の求人倍率も2倍前後で推移するようになり、職業学科(専門高校)の卒業が就職に有利とはいえない状況が進んだ。学歴社会に対する意識が先鋭化していったことも、大学に進学しにくい職業学科を回避し、普通科への進学を促進する要因になったと考えられる※2

(3)混迷期:バブル崩壊後
   (1990年代半ば以降)

偏差値に基づく選抜において下位に位置づけられた職業学科(専門高校)であるが、バブル経済の崩壊後は新しい役割が期待されることになる。本報告書でも用いている「専門高校」という名称は、1995年に「職業教育の活性化方策に関する調査研究会議」(座長:有馬朗人氏)の最終報告においてはじめて登場した。「スペシャリストへの道」と題されたこの報告では、職業教育を小・中学校や普通高校も含めたすべての学校で行うとともに、専門高校では特に高度な専門知識・技術を有する人材を育成すべきだと提案する。その後は、産業の変化に応じた専門家の育成という観点から、教育内容の見直し(実験・実習・体験の重視、インターンシップ、日本版デュアルシステム、大学との連携、資格や検定の活用)や新しいタイプの専門高校の創設などの改革が進められることになる。2008年に中央教育審議会に諮問された「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育のあり方について」の審議で検討されている専門高校の位置づけも、この路線に沿って進められているとみてよい(荻元2009 ; 名取2009)。

とはいえ、図1からもわかるように、1995年以降も職業学科(専門高校)に在学する生徒は減少を続けている。総合学科が創設されたことの影響もあるが、高校生に占める比率も、2009年度は19.7%と2割を下回った。さらに、就職率が5割前後に下がっており(図2)、職業学科(専門高校)を卒業したあとにすぐ就職するケースは、かなり減っていることがわかる。高校と企業間の「実績関係」に基づく就職の減少、正規雇用の減少によって、高卒者の就職が難しくなっている今日、専門高校における教育を職業とどう接続させるかは、以前のように容易ではない(本田2009)。

また、図3に示すように、近年、職業学科(専門高校)を卒業した生徒の大学進学率が上昇している。就職の難しさに加えて、少子化により大学に入りやすくなったことが、大学進学者を増やす要因になったと考えられるが、このような卒業生の進路の多様化にどう対応するかも、専門高校において解決しなければならない課題といえるだろう。

図3:大学進学率の推移(学科別)
図3:大学進学率の推移(学科別)

〈注〉
※2 1985年に行われた「教育問題(学歴)に関する世論調査」(内閣府、20歳以上の成人対象)では9割が「日本社会は学歴や出身校が重視されている」と回答している。

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