都立専門高校の生徒の学習と進路に関する調査

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 都立専門高校の概要

ここでは、今回の調査対象となっている都立の専門高校と普通科進路多様校のうち、専門高校の実態について基本的な情報・データを紹介する。

1.専門高校とは

専門高校とは、一言で表すならば「農業、工業、商業、水産など様々な分野において将来の中核を担うべき技術者や技能者、実務者の育成を目指した教育を施している高校」のことであり、各分野のスペシャリストに必要な専門性の基礎・基本の定着を重視している。以前は「職業高校」と呼ばれていたが、1995年に文部科学省が行った「職業教育の活性化方策に関する調査研究会議」において「専門高校」という用語が初めて使用されて以来、この語が定着した。歴史的にみても、職業教育はその時代のニーズや環境変化に対応する形で変化してきた。

戦前は「実業高校」と呼ばれ、即戦力の職業人育成を目指した専門技術・知識の習得を中心とした職業教育が行われていたが、戦後、旧実業高校を母体に新たに編成された高等学校においては、職業教育はそれ単独ではなく、普通教育とあわせて位置づけられるようになり高等学校の主要な目的の1つとなった。当時は高校を卒業した生徒の6割から7割がそのまま就職していたこともあり、職業教育はある特定分野の生徒だけではなく、すべての生徒にとって重要なものとして認識されるようになっていった。

そして高度経済成長期に入り、職業教育は再び変化をみせる。産業の近代化・高度化は、1つの職種におけるスキルや能力を専門分化させ、その変化に伴って職業教育を通して育成すべき技術や知識もまた専門分化していった。とくに1964年から1974年までの約10年間の変化は著しく、職業高校の学科種は89種から252種にまで急増した。

しかし、そうした専門化の他方で、大学・短大など高等教育機関の大衆化が進み、職業高校から大学進学を目指す生徒が年々増加するにつれて、職業高校でも進学にも対応した準備教育を行うようになった。前述した「専門高校」という用語が使用されはじめたのもこの90年代後半の時期であり、職業教育という側面だけではなく、高等教育機関への進学を視野に入れた専門教育の側面が強調されはじめてきたことが背景にある(東京都教育委員会2002『専門高校検討委員会報告書』)。このように専門高校やその教育内容は、産業構造の変化や時代のニーズに対応する形で変化してきた。

以上が専門高校の歴史の概略である。それでは次に今回の調査対象である、都立の専門高校にスポットを当て、その基本的な実態に関するデータを取り上げながら説明する。

 2.データでみる都立専門高校

図1図2図3は東京都教育委員会が公表した統計データ(『平成20年度公立学校統計調査報告書』)をグラフに表したものである。なお、ここでの普通科は、今回の調査で取り上げる普通科進路多様校を含むすべての普通学科の高校を指す。

まず、図1の学校数であるが、普通科の比率がもっとも高く、全体の65.0%を占めている。専門学科は29.9%と全体の3割で、総合学科(普通教育と専門教育の両方を施す学科として1994年に制度化された学科)は5.1%であった。つづいて、専門学科の内訳を示したものが図2である。全体に占める比率は、高いものから順に工業科37.5%、商業科27.3%、農業科15.9%となっており、工業科と商業科を合わせると全体の64.8%を占めていることがわかる。そして、最後に生徒数を示した図3であるが、76.7%が普通科の生徒であるのに対して、専門学科の生徒は17.4%にとどまっている。専門学科の学校数が全体の3割であったことを考慮すると、専門学科における1校当たりの生徒数は普通科よりも少ないことがわかる。

また、ここではグラフとして示していないが、全国平均と東京都の数値を比較したところ、全体における専門学科の比率は全国平均を4.2%下回っている。また、学校数の内訳の比率については、工業科が11.4ポイント高く、商業科が5.8ポイント低い。そして生徒数の比率は、普通科が2.2ポイント高く、専門学科は3.2ポイント低い。

以上のことから都立の専門学科と全国の専門学科との共通点としては、1校当たりの生徒数が普通科より少ないこと、また都立の特徴としては、工業科の生徒が多く、商業科の生徒が少ないことがあげられる。

図1:都立高校 学校数(平成20年度) 図2:都立専門高校 学校数内訳(平成20年度)
図1:都立高校 学校数(平成20年度) 図2:都立専門高校 学校数内訳(平成20年度)
図3:都立高校 生徒数(平成20年度)
図3:都立高校 生徒数(平成20年度)

注1) 図2の専門高校の学科別学校数の計は、学科を2つ以上設置する学校があるため、図1の専門学科の計とは一致しない。
注2) 『平成20年度公立学校統計調査報告書「学校基本調査報告」』をもとに作成(図1〜3)。

 3.都立高校改革における専門高校

平成9年度から平成18年度までの10年間にわたり、東京都は都立高校改革を進めてきた。専門高校もそのなかで改革の対象として取り上げられており、具体的な改革項目としては「特色ある専門教育の展開」「社会の変化に対応した専門高校の個性化・特色化」「進学指導の充実、大学の推薦枠等の拡大」「地域・社会、企業等との連携及び就学体験の実施」「新たなタイプの専門高校の設置」「全日制課程の適正な規模と配置」(専門高校を平成20年までに15校減らす)の6つがあげられている。特に「新たなタイプの専門高校の設置」については積極的な改革が進められており、新たに設置された「進学型専門高校」の科学技術科とビジネスコミュニケーション科では、科学やビジネスの領域のスペシャリストになるべく、大学への進学を目的とした教育課程が組まれている。また、「産業高校」と呼ばれる商業・工業をあわせた高校では、生産・流通システム全般に関する基礎的な力を養うことを目的とした教育課程が組み込まれている。

以上のように、都立の専門高校では、大学への進学や新たな産業界のニーズに対応するべく高校再編が進められている。しかしながら大学全入時代を迎えつつある今日では、普通科への進学を希望する生徒が増加しており、専門高校への志望予定者は全体的には減少傾向にある(図4)。

東京都が、今後も引き続き専門高校の適正な規模と配置を推し進めていくことを考慮すると、専門高校がいかにそれぞれの個性や特徴を打ち出していくかが今後問われることになるだろう。

図4:東京都の中学3年生の都立高校志望予定の推移(過去5年間)
図4:東京都の中学3年生の都立高校志望予定の推移(過去5年間)

〈引用文献〉
総務省統計局、2009、『日本の統計2009「22−17 進学率と就職率」
東京都教育委員会、2002、『専門高校検討委員会報告書
東京都教育委員会、2009、『平成20年度 公立学校統計調査報告書「学校基本調査報告」
東京都教育委員会、2009、「都立高校全日制等志望予定(第1志望)調査(平成17年度〜平成21年度)

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