HOP! STEP! 小学校英語! 【実践事例】「音に慣れさせる」指導で通じる英語を習得させる
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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基礎・基本にあたるプロソディー≠習得し英語の音に慣れさせる

 小川先生が、小学校英語の「基礎・基本」にあたる要素として重視しているのが、英語の「プロソディー」の習得である。プロソディーとは、リズムや音の高低などの要素で構成される、その言語に特有の音声的な性質のことだ。
 「いわゆる『日本語英語』の話し方は、文の始めから終わりまで平坦に発音している日本語のプロソディーを、そのまま英語に用いている状態です。こうした話し方は、外国人にとっては非常に聞き取りにくく、ほとんど理解されないかもしれません。個々の単語の発音はもちろん大切ですが、ある程度の長さの英文をきちんと英語のプロソディーに乗って話す練習をすることが、まずは大切だと思います」
 英語のプロソディーは、内容語(名詞、動詞、形容詞、副詞など)は強く高い音で発音するのに対し、機能語(冠詞、前置詞、代名詞、助動詞など)は低く弱い音で発音し、しばしば内容語に飲み込まれるといった特徴がある。こうしたプロソディーの習得に有効なのが、「チャンツ」を活用した学習だという。チャンツとは、一般にはリズミカルに唱える詩や言葉遊びを指す(図1)。これを繰り返すことによって英語の音に慣れて、プロソディーが自然に身につくという。

図1

英語圏の子どもならだれも知っているナーサリー・ライム(イギリスの伝統的な童謡)の一つ。●の箇所を強調して発音する。_の箇所は韻を踏んでいるため、子どもの耳に馴染みやすい

■音声データダウンロード
(「Five little monkeys」)
WAVファイル(809KB) 「Windows Media Player」はこちらからダウンロードできます
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 「英語本来の話し方に近づくと共に、どこに気をつけて聴けば理解できるのかがわかってリスニングの能力も向上します」
 チャンツを活用した学習では、音声教材の活用について、発想の転換が必要だという。
 「熱心な教師ほど教材を自分でつくろうとしますが、自作教材には限界がありますし、英語活動にはよい音源が必要です。特にプロソディーを教える際には、ネイティブスピーカーの音声を聴かせるのが最も効果的です。自分ですべて用意しようとせずに、CDやDVD、インターネット上の音声教材を積極的に使いましょう」
 チャンツや歌などの指導の際に小川先生が重視するのが、教師が率先して大きな声を出すことだ。それにより、教室に明るく楽しい雰囲気が生まれ、子どもが前向きに取り組むようになる。
 「これまでの日本人には、ネイティブスピーカーではないのに英語らしい発音をするのが『気恥ずかしい』という感覚があったのは事実です。それが日本人の英語を通じにくくしていました。これから本格的に英語を学び始める子どもに、そのような感覚を持たせてはいけません」
 とはいえ、「英語が苦手」「発音に自信がない」という声があるのも事実。小川先生は次のようなアドバイスをする。
 「指導を良い機会として、『子どもと一緒に学ぼう』と考えてみてはいかがでしょうか。実際、私のまわりには、チャンツや歌などで自ら積極的に声を出すことで苦手意識を克服した教師が大勢います」


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