BERD教育リポート メールマガジンバックナンバー

 「BERD教育情報通信」 バックナンバー 第7号(2005年12月06日発行)

※文中に記述された内容は当メールマガジン発行時のものです。

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■   ■   ◆BERD教育情報通信*第7号 2005/12/6発行◆
■   ■    ベネッセ教育研究開発センター メールマガジン
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■    ■
■    ■ BERD=Benesse Educational Research & Development Center
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こんにちは。BERD教育情報通信第7号をお届けします。これまで3回にわ
たってお伝えしてきた特集もいよいよ最終回。いかがでしたでしょうか?今回
は、特集で取り上げている「全国学力調査」に合わせて、その他のコーナーで
も「試験」に関する話題を集めてみました。レポートからコラムまで試験の話
題が満載です!


■ INDEX ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥・
  【1】ベネッセ教育研究開発センターからの新着情報&お知らせ【news】
  【2】《特集》日本の義務教育のゆくえ;
    中央教育審議会 義務教育特別部会での審議報告から【report】
  【3】教育レポート「学力テストを実施予定の中学校は6割台」【report】
  【4】今号のKey Word「高等学校入試制度改革」【column】
  【*】編集後記
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  【1】ベネッセ教育研究開発センターからの新着情報&お知らせ
             http://benesse.jp/berd/
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★05年11月30日
  VIEW21[小学校版] 『小学校英語活動Vol.4「金沢世界都市構想」のもと、
  市立全小中学校で小中一貫英語教育』を掲載しました
  http://benesse.jp/berd/center/open/syo/view21web/syo_english/2005/11/
s_en11_report_01.html

★05年11月24日
  報告書『中学校の学習指導に関する実態調査2005』を掲載しました
  http://benesse.jp/berd/data/index.shtml#gakusyusidou2005


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  〜ベネッセ教育研究開発センターの調査研究報告書より〜
     ◇◆中学生の「漢字の習得状況」がわかる!!◆◇
  
     『中学生の国語の学習に関する調査』報告書
           12月20日発刊

・中学生配当漢字の書き取りテスト結果
・国語の学習にかかわる生徒の意識・実態に関するアンケート調査結果
より、中学生の漢字習得状況と生活・学習態度の関係を明らかにします

※ 頒価 400円
※ お申込方法:郵便番号、住所、氏名、電話番号をご記入いただいたFAXを
   下記までお送りください
   FAX:×××-××××(ベネッセ教育研究開発センター教育調査室)
※ 12月20日以降、ベネッセ教育研究開発センターのHPでもご覧いただけます
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  【2】《特集》日本の義務教育のゆくえ;
      中央教育審議会 義務教育特別部会での審議報告から
      第4回【最終回】未来に向けて、義務教育の方向性
           〜「全国学力調査」実施の意味
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前回は、文部科学省・銭谷眞美局長の話を通して中教審での議論をまとめ、今
後の教育改革のカギを握る学校教育の結果検証について、そのあり方を考えま
した。本特集の最終回となる今号では、その結果検証の方策の1つである「全
国学力調査」について考察します。


◆===== 特集の構成 ============================================◆

  第1回 審議紛糾の背景〜財源論の視点
   第2回 未来に向けて、義務教育改革の方向性(前編)
       〜学校はどう変わる
   第3回 未来に向けて、義務教育改革の方向性(後編)
       〜文部科学省 銭谷局長に訊く
☆ 第4回【最終回】未来に向けて、義務教育改革の方向性(後編その2)
       〜「全国学力調査」実施の意味

*特集のバックナンバーはこちら↓
   http://benesse.jp/berd/magazine/index.html#bn

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◇学力調査を個々の生徒指導に活かす◇

今回の中教審の答申にも盛り込まれている「全国学力調査」について、文部科
学省は2007年度からの実施構想を持っていますが、その運用のあり方とねらい
について、前回同様、文部科学省・初等中等教育局の銭谷局長に伺っています。

「対象は小学校6年生と中学校3年生を考えています。実施教科は国語と算数
(数学)、私どもとすれば、『希望する学校』はすべて参加できるようにした
いと思っています。しかしご注意いただきたいのは、これは文部科学省がすべ
ての小学校中学校に強制する『悉皆調査』(※)ではないという点です。近く
『専門家会議』を開催して、過度の競争や学校間の序列化にならないように学
力調査の具体的な実施方法等について検討を進めたいと思っています。いずれ
にしても、これからは学力だけではなく『結果の検証』ということが必要だと
思っています」


   ※悉皆(しっかい)調査:調査対象の母集団のすべてに対して行う調査の
    ことで、全数調査を指す。国勢調査などは悉皆調査の代表


調査を実施する大きな目的は2つあると銭谷局長は語ります。
「ひとつは『全国的な状況把握』、もうひとつは『参加した学校の客観な学力
(状況)把握=個々の生徒についても今後の指導に活かせる』ことです。学力
調査の活用のしかたは各学校に任せますが、調査結果はぜひ各学校にお返しし
たいと思います。各学校での学校全体の指導計画の見直し、改善に活かしてほ
しいのです。したがって、調査により、個々の生徒のつまずきの把握を通して、
指導改善に活かせる、役立つ機能を持たせたいと思っています」


◇学力調査が学校間の競争過多を招いてはいけない◇


「全国学力調査」が実施された場合、課題もあります。それは前述のとおり、
学校間の過度の競争、序列化を助長するのではないかという懸念です。
これに対して学校や地域が過敏に反応し、「特色ある学校作り」などの学校運
営に悪影響を与えてしまっては本末転倒です。さらに、学校選択制が実施され
た場合、学校間の格差が入学者数の過度な拡大に繋がる恐れも生じます。その
意味では、この「全国学力調査」のありかたや、継続的に実施する場合の行政
側の説明責任が問われそうです。この義務教育改革の行方を左右する「全国学
力調査」について、われわれはしっかり見ていく必要がありそうです。
(おわり)


*「全国学力テストの実施」や「小中一貫校の設置」など、義務教育に関する
   保護者と教員との意識のギャップを紹介した記事はこちら↓

/berd/center/open/chu/view21/2005/09/c02data_01.shtml


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  【3】BERD教育レポート「学力テストを実施予定の中学校は6割台」
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2007年度から全国的な学力調査の実施が検討されていることは、上の【1】特
集でも触れたとおりです。一方で、県や地域単位で独自の学力テストを実施す
るところも増えてきています。


◇都道府県ごとにばらつき◇

2005年4月〜7月、ベネッセ教育研究開発センターでは全国の中学校の教務主
任、理科担当教員、社会科担当教員を対象に学校での取り組み、指導の中で感
じること、生徒の変化などについてアンケート調査を実施しました。
(うち教務主任調査:有効回答数3,170名)

この結果によると、2005年度の全校的な取り組みとして、

・市販の標準学力検査を「行なう予定」の割合・・・66.9%
・地域や県などを単位とした学力テストを「行なう予定」の割合・・・62.8%

となりました。

これらは、同じく全校的な取組みに関する実施予定をたずねた

・「職場(企業や商店など)での体験学習」(「行なう予定」87.2%)
・「朝の読書活動」(同81.2%)
・「保護者や地域住民による授業支援(ゲスト講師など)」(同72.1%)

などの、体験・活動色が濃い学習と比較して実施率は低くなっています。

注目すべきは、学力検査・テストを「行なう予定」の割合が各都道府県によっ
て10%台から90%台まで分散している(ばらついている)」という点です。


<市販の標準学力検査を「行なう予定」 ※数値は都道府県の数>
  ・ 0%以上10%未満…0
  ・10%以上20%未満…1
  ・20%以上30%未満…3
  ・30%以上40%未満…0
  ・40%以上50%未満…7
  ・50%以上60%未満…5
  ・60%以上70%未満…8
  ・70%以上80%未満…6
  ・80%以上90%未満…10
  ・90%以上    …7      【平均:66.9%】


<地域や県単位での学力テストを「行なう予定」※数値は都道府県の数>
  ・ 0%以上10%未満…0
  ・10%以上20%未満…1
  ・20%以上30%未満…1
  ・30%以上40%未満…4
  ・40%以上50%未満…7
  ・50%以上60%未満…5
  ・60%以上70%未満…7
  ・70%以上80%未満…6
  ・80%以上90%未満…7
  ・90%以上    …9      【平均:62.8%】


このような格差は、都道府県ごとの施策の違いによるものか、それとも学校ご
との実施状況の違いが表れたからなのか、今回の調査だけでその要因を探るの
は難しい面があります。しかしご存知の通り、最近は学力向上に向けた取り組
みが各校ごとに多様化する傾向にあり、他校とは異なった独自の方針、教育重
点方策を行なっているケースが多く見受けられることは事実です。


一方、保護者は「学力テスト」に関してどんな印象を持っているのでしょうか。
2003年12月〜2004年1月にかけて実施した朝日新聞社との共同調査
「学校教育に対する保護者の意識調査」によると県や全国規模の標準学力テス
トを行なうことに賛成(「どちらかというと賛成」含む)の保護者は79.7%と、
約8割が支持しています。生徒の学力低下が叫ばれる今日、我が子の学力
が、クラス内・学校内だけではなく全国的にみてどの程度の位置にあるのかを、
客観的な物差しで把握したいと考えている方が多いと思われます。


今後は、先に述べたような各校レベルでの教育方策の多様化の一環として学力
テストの実施率が高まる可能性もあります。
しかし、前出の「学校教育に対する保護者の意識調査」では標準学力テストの
結果を各校で公開することに49%が賛成(「どちらかというと賛成」含む)す
る一方、反対(「どちらかというと反対」含む)する方も34.1%います。
結果公表の有無やその方法については、テストの結果をいかに活用すべきかの
観点から、慎重に検討する必要があると言えそうです。

 
  ※ ベネッセ教育研究開発センターでは、教育環境の変化や子ども、保護者、
  教育関係者などを対象とした意識・実態調査を実施し、その結果を冊子や
  ホームページ上で発信しています。本コーナーでご紹介した調査は下記URL
  からご覧いただけます。

  「中学校の学習指導に関する実態調査報告書2005」
   http://benesse.jp/berd/data/index.shtml#gakusyusidou2005

 「学校教育に対する保護者の意識調査」
   http://benesse.jp/berd/data/index.shtml#hogosyaisiki


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  【4】今号のKey Word 「高等学校入試制度改革」
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文字通り師走を迎え、各地の中学校では高校受験を控えた生徒、先生、保護者
の皆さんが、志望校の最終決定に取り組まれていることでしょう。そんな中ご
存知の方も多いと思いますが、いま公立高校入試が大きく変わりつつあります。

改革の主なポイントは以下の4点です。

(1)学区の緩和/撤廃
   生徒が入学を志望できる地域の範囲を定めた学区を撤廃、または緩和する。
   これによって、生徒が自分の興味・関心や適性に合った高校に進むための
   選択肢が広がります。


(2)受験機会の複数化
   一般入試を2回(前期、後期など)に分けて実施すること。2000年度入試
   に群馬県が導入して以来、急速に拡大中です。2005年度は、秋田・埼玉・
   岡山県などで新たに導入されています。これまでの選抜方法は、推薦入試
   と一般入試というパターンがほとんどでしたが、学力以外の実績や能力を
   持つ生徒など、より多くの生徒に複数の受験機会を与えることができます。


(3)学校独自の入試問題
   受験機会を複数化した県のなかには、前期と後期の選抜方法に違いを持た
   せ、うち前期は学校が独自に作成した学力テストを実施するところがあり
   ます。また全県一斉の学力テストが主流の後期入試でも、高校独自の教科
   問題を課すケースがあります。東京都では都立日比谷・西・八王子東高校
   などがその代表例です。


(4)入試問題内容の変化
   入試問題の出題傾向として、旧教育課程時と比較して新教育課程以降の方
   が思考力や表現力を重視している傾向が強いようです。ただしその程度は
   都道府県によってばらつきがあるとの指摘もあります。


こうした変化の背景には、社会の求める人材像の変化とそれに伴う学校教育へ
の要請があります。若者が自立できる社会を実現するために、高校に対しても
基礎基本の徹底や自ら学び考える力の養成などが要請され、この変化が入試制
度にも表れているようです。
また、突き詰めれば国の行財政改革や少子化も高校入試の変化を後押ししてい
ます。少子化に直面する地域の公立高校では、統廃合を迫られつつある学校が
少なくありません。そこで学区の垣根を取り払って競争原理を取り入れ、各高
校が生き残りをかけて特色化(入試の多様化も含む)を進めるようになってき
ます。


こうした変革の流れは拡大傾向にありますが、課題もあります。各校の特色化
が進むほど、教育機会や学力の格差拡大や、目標を明確に持った「できる子」
は伸びても、その逆の子どもも増える、といった問題が生じる恐れがあります。
また、入試制度が複雑化するほど、進路指導や作問担当の教師の負担が増加す
るでしょう。こうした負の問題に対しても1つずつ解決していく姿勢が国、各
自治体、高校に求められます。


高校入試改革についての詳細レポートをこちらでご覧いただけます↓

・「高校改革のいま」(Between04年12月号)
  http://benesse.jp/berd/center/open/dai/between/2004/12/02kou_01.html

・「変わる高校入試に中学校はどう向き合うか」(VIEW21中学版04年10月号)
  http://benesse.jp/berd/center/open/chu/view21/2004/10/c01toku_01.html


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   【編集後記】
  幼い命が奪われる事件が後を絶ちません。何の罪もない子どもたちを不審者
  から守るため、家庭、学校、地域の文字通り「三位一体の改革」が求められ
  ています。――もちろんその通りなのですが、やはりどこかで「もし我が子
  だったら、否、そうは言ってもうちの子どもがまさか、大丈夫」と考えてし
  まう自分がいます。
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