BERD教育リポート メールマガジンバックナンバー

 「BERD教育情報通信」 バックナンバー 第9号(06年01月11日発行)

※文中に記述された内容は当メールマガジン発行時のものです。

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■   ■   ◆BERD教育情報通信*第9号 2006/1/11発行◆
■   ■    ベネッセ教育研究開発センター メールマガジン
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■    ■
■    ■ BERD=Benesse Educational Research & Development Center
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松の内も明け、お正月気分も抜けて気分一新!皆様いかがお過ごしでしょうか。
本年もよろしくお願いいたします。
一足お先にお届けした、文科省ホームページの新着・更新情報に続き、2006年
第1回目のBERD教育情報通信をお届けします。今回は、昨年の中教審義務
教育特別部会で委員を務められた、東京大学大学院教授の小川正人先生への取
材より「義務教育制度はどこにいくのか」をメインにお届けします。


■ INDEX ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥・
  【1】ベネッセ教育研究開発センターからの新着情報&お知らせ【news】
  【2】BERD教育レポート『中教審義務教育特別部会委員・東京大学大学院
     教授 小川先生に訊く〜義務教育制度はどこにいくのか』【report】
  【3】統計・調査データより『コレは何の数字でしょう?』【column】
  【*】編集後記
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  【1】ベネッセ教育研究開発センターからの新着情報&お知らせ
       http://benesse.jp/berd/
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★06年1月10日
  情報誌 BERD 2006年第3号 特集『提言:日本の10年後の教育ヴィジョン』
  を掲載しました
  /berd/center/open/berd/index.html

★06年1月10日
  本メールマガジンのバックナンバー第8号を掲載しました
  /berd/magazine/index.html#bn

★06年1月5日
  VIEW21[小学校版] 『小学校英語活動Vol.5「小学校英語をどのように進め
  るべきか」小学校英語活動シンポジウム』を掲載しました
  /berd/center/open/syo/view21web/syo_english/
2005/12/s_en12_report_01.html

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  【2】BERD教育レポート
  『中教審義務教育特別部会委員・東京大学大学院教授 小川先生に訊く!
   〜義務教育制度はどこにいくのか』
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2005年度は、義務教育の結節点となるような論議が行われました。これを受け
て2006年度以降、さまざまな教育改革が実施されようとしています。そこで、
中央教育審議会義務教育特別部会委員であり、教育行政の地方分権・教員の職
能成長などを研究領域とする東京大学大学院教育学研究科教授・小川正人先生
に、昨年の中教審での審議を振り返りながら、これからの地方教育行政や教育
のあり方について伺いました。


◇地方分権は不可避、権限は現場の近くに◇


昨年の中教審における義務教育改革への論議について、小川先生は以下のよう
に所感をまとめています。


「文部科学省の教育を論議する場に財政論が持ち込まれたのが、中教審の義務
教育特別部会だった。地方六団体からの参加委員とは最後まで議論が噛み合わ
なかった。約20兆円の国庫補助負担金のなかには、もっと規模の大きな補助負
担金があるにもかかわらず、なぜ義務教育費国庫負担金だけがターゲットとし
て取り上げられたのか、(参加する)委員として理不尽さを感じた。もとより中
教審は教育論議を行なう場であるはずが、8,500億円の義務教育費を地方に税
源を移譲するかどうかなど、議論の土俵が違うと感じていた。」


中教審の審議のなかでは、地方さらには学校の裁量性を高めるための議論が行
われていました。これについて小川先生は、正しい地方分権のあり方を考えた
場合、国庫負担による財源の保障がなによりも重要である、との考えを示され
ています。


「地方分権のこれからを考えた際に、教員の人件費、研修、採用、人事権やカ
リキュラム開発の権限などは可能な限り現場に近いところ、つまり市町村(基
礎自治体)におろした方がよい。この流れは今後避けられないと思う。しかし
そうなったときに、国庫負担金制度の廃止は非常に大きなリスクを伴う。市町
村をベースとした地方教育行政を考えていく場合、教育の人件費などの運営費
や人事権を安定的にまかなう仕組みがなければならない。」


◇負担割合1/3のウラにある危険


さて、実際には義務教育国庫負担の割合が1/3で決着しました。小川先生は、「
1/3では国の負担の意味がなくなるので負担割合を再検討すべしとの案が俎上
に載り、一気に国庫負担がなくなるのではないか、と不安視する向きもある」
と言います。「構造改革の流れにあるとはいえ、教員給与や教員の定数ひとつ
動かすにも、非常に難しい状況になっている」(小川先生)


こうなると今後、地方はますます教員数を確保できなくなり、少人数教育や複
数担任制などの試みも拡充できなくなる恐れが強まります。ある地方の県では、
教育に対する財源が十分確保できない現状のなかで、定数法(教員定数の確保
)も風前の灯になっているといいます。本来は、こうした弊害も十分視野に入
れて、義務教育の国庫負担を今後どうするのかが議論されるべきだったのかも
しれません。


◇義務教育費の財源のありかをどう考えるか◇


昨年は、義務教育費の財源を地方がもつのか、国が持つのかで議論が二つに割
れたままでした。
小川先生は、義務教育費国庫負担から地方に税源を移譲する場合のデメリット
を以下の3点にまとめています。


(1)給与に各自治体格差が生まれ、また給与保障が低いとなれば、よい先生が
 が集まらなくなる
(2)少人数教育などの実践ができなくなる
(3)学校経費の私費負担(家庭の負担)が増える


地方に税源を移譲する以上、その地方が望む政策を優先させることは止むを得
ないケースもあるでしょう。高齢者の比率が高い自治体は当然高齢者に厚い政
策中心に展開することも予想されます。そんななか、教育に関して従来の水準
以上の費用が本当に保証されるのでしょうか?これらの疑問に対する回答は明
確に示されているわけでありません。

2006年――国や行政は、05年10月の中教審答申で示された義務教育のグランド
デザインのもと、教育課程部会における審議結果などを踏まえて、より具体的
教育のビジョンを分かりやすく国民に説明することが求められてくるでしょう。
                  (2005年11月取材分を編集部にて再構成)

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  【3】コレは何の数字でしょう?
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◇◆ このコーナーについて ━━━━━━━━━━━━━━━…‥・
    まず冒頭で或る数字(データ)を示します。これは、教育に関連する
    諸調査の結果を一部抜粋したものです。その数字が何を表している
    のかを、ヒントを参考にしつつ考えてみてください。
   …‥・━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇


◆今回は・・・◆
【学校全体で組織的な○○○○をしている小学校はわずか2%!】

◆HINT◆
「組織的に」ではなく「なんらかの形で」と言い換えた場合、この割合は9割
  以上にUPします。また、○○○○の必須化への道のりも要注目です!
…‥・…‥・…‥・…‥・…‥・…‥・…‥・…‥・…‥・…‥・…‥・

◆ANSWER◆
【学校全体で組織的な「英語活動」をしている小学校の割合、わずか2%!】

現在、中央教育審議会外国語専門部会では、小学校英語を必修にするかどうか
の議論が進んでいます。実際、全国の小学校の92.1%ではなんらかの英語活動
が実施されており、保護者の関心も高いようです。

しかし、この英語活動の内訳を見ると、自治体単位などで組織的に活動してい
るケースは全国の小学校のわずか2%しかありません。

まず、小学校英語の実施段階を次の(1)〜(4)に分けてみましょう。


(1) たまたま英語に熱心な先生がいる、ALTが配属されたなどの理由で、個別
   の学級が導入している段階
(2) 校長の方針、研究開発校に指定されたなどの理由で、学校全体で取り組ん
   でいる段階
(3) 隣接している小中学校などが、小中連携で実施している段階
(4) 一貫したプログラムのもと、自治体ぐるみで実施している段階


NPO法人小学校英語指導者認定協議会(略称:J-SHINE)によると、平成の大
合併前の2005年4月時点での自治体数約2300のうち、(4)の段階まで進んでいる
と思われる自治体は20前後あったそうです。(3)の段階までは30弱、(2)の段階
までは20弱となり、(2)(3)(4)を合わせた自治体数は60強となり、これは2300
自治体の2〜3%にあたります。残りの97、8%は(1)の段階、つまり、先生や地
域の個人的な頑張りに委ねられているというのが実情のようです。


2005年11月に行なわれた「小学校英語活動シンポジウム」でも、「この数字だ
けを見ると、小学校英語は『教科』化の検討どころか、まだきちんとした英語
を指導する段階になっていないのではないか。これを広げるにはどうしたらよ
いのかというのが現実的な課題」と懸念する声もありました。

小学校英語については、誰が指導するのかも大きな課題で、文科省内でも、中
教審の専門委員の間でも考え方は色々あるようですが、前述の(1)から(4)に当
てはめると4つの考え方があると思われます。


(1) ALT
(2) 小学校の担任の先生
(3) 英語の免許を持っているので、中学の先生
(4) (1)〜(3)では無理だから、地域の人材や民間人にしてもらう


現段階では、担任の先生の力量にばらつきがあるのが現状だと思われます。そ
こで英語活動を本格化していくためには、研修の仕組みづくりや成功事例(ま
たは失敗事例)を共有するなど、担任の先生個人や学校の個別の「奮闘」に任
せない、自治体ぐるみ、国単位でのサポート体制の整備が小学校英語活動の成
否のカギを握っているのではないでしょうか。

ベネッセ教育研究開発センターのホームページでは、
Web限定のコンテンツを掲載しています。
そのひとつが、小学校英語活動の動向をお伝えする「VIEW21[小学校版]教育情
報レポート」。
  http://benesse.jp/berd/center/open/syo/index.shtml


今回は、 Vol.5
「小学校英語をどのように進めるべきか 小学校英語活動シンポジウム
〜j-SHINE小学校英語活動フォーラムin松江より〜 」
  http://benesse.jp/berd/center/open/syo/view21web/syo_english/
2005/12/s_en12_report_01.html
の一部をご紹介しました。

以下のサイトでは、小学校英語の実践事例をご紹介しています。
併せてご参照ください!


Vol.1 「場面シラバス」による英語学習で小中連携の英語学習を目指す
     千葉県成田市立 成田小学校
 http://benesse.jp/berd/center/open/syo/view21web/syo_english/
2005/08/s_en08_report_01.shtml

Vol.2 「聞く力」をつけ、バイリンガルの基礎能力を育成する
     東京都品川区立 城南小学校
 http://benesse.jp/berd/center/open/syo/view21web/syo_english/
2005/09/s_en09_report_01.shtml

Vol.3 市教委のリーダーシップで全市をあげて取り組む英語教育
     沖縄県那覇市
 http://benesse.jp/berd/center/open/syo/view21web/syo_english/
2005/10/s_en10_report_01.shtml

Vol.4 「金沢世界都市構想」のもと、市立全小中学校で小中一貫英語教育
     石川県金沢市
 http://benesse.jp/berd/center/open/syo/view21web/syo_english/
2005/11/s_en11_report_01.html


*NPO法人小学校英語指導者認定協議会(略称:J−SHINE)
  小学生に英語を指導する技能を持つ地域の人材や民間の指導者を育成・認定
  し、教育現場に供給していこうとしている民間機関(NPO)。2003年に発足。
  代表・大河原愛子氏。05年12月現在、約4,000人が指導者資格を取得し、全
  国の学校現場で指導している。
  http://www.j-shine.org/index.html

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   【編集後記】
  年賀状のやり取りが、年を追うごとに減っています。こと私的な挨拶につい
  てはメールの割合が増えており、かつて楽しみにしていたお年玉付き年賀は
  がきの当選番号発表も、昨年などはすっかり忘れていたほどです(ちなみに
  今年の1等賞は「わくわくハワイ旅行」等5種類とか!)。日本郵政公社によ
  ると、日本の年賀はがきの起源は平安時代だそうです。伝統の重みと、変化
  への許容。そして、確実にその変化の一因となっている自分。読者の皆様に
  対しましてもメールでのご挨拶となりますが、本年も当メールマガジンご愛
  読のほど、宜しくお願い申し上げます。
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