教育現場リポート「いま子どもたちに必要な力」第1回:「基礎基本」(3)さかのぼり学習で学力の下支え

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教育現場リポート「いま子どもたちに必要な力」

第1回テーマ:「基礎基本」

(3) さかのぼり学習で学力の下支え

〜大阪市立加美北小学校・図書啓展先生

 「よーいスタート」
 教員の掛け声とともに、朝の教室にプリントに向かう子どもたちの鉛筆の音が響く。

 中小の工場が林立する一角にある、大阪市立加美北小学校(全校生750人、植村雅美校長)では、登校から1時間目までの10〜15分間などを利用し、基礎計算や既習漢字、音読などの「繰り返し学習」を全学年で毎日続けている。子どもたちは登校するとすぐに準備を始め、教員が教室に来るのを机に座って待ち受ける。

写真1
できた子が計算の答えを黒板に書く間、
つまずいている子の様子を見て回る図書先生(右下)

 研究主任の図書啓展先生は「私が赴任したころには考えられない光景でした」と振り返る。

 赴任して最初に受け持ったクラスでは、きちっと座って勉強できないなど、授業が成立しないこともしばしばだった。ある日、算数の授業の中で、2桁の割り算ができていない子どもが多いことに気がついた。

「4年で習う2桁の割り算は算数の基礎基本である四則計算の集大成。それをできていないことが、子どもにとって大きなストレスになっているのではないか」

 そう感じた図書先生は、百ます計算などで過去にさかのぼって四則計算をやり直し、ほぼ毎日繰り返した。計算力がつくにつれ、子どもたちの授業態度も少しずつ落ち着いていった。


 2003年に研究主任となり、各学年の研究担当の教員と情報交換をする中で、学級運営の困難な状況が学校全体の問題であることがわかってきた。低学年から授業についていけない子が出始め、高学年ではクラスの中で明らかに学力格差が広がっているように思えたが、そうしたデータがなく、指導について教員間で共通の理解を得ることができていなかった。

 04年3月、図書先生は各学年の研究担当教員に「全校で基礎計算や漢字の定着度の実態を調査しましょう」と提案した。子どもたちがどこでついていけなくなったのかを知りたがっていた他の研究担当教員も賛同。職員会議でも了承された。

 新学期になり、2〜6年生で、過去の学年に習ったすべての計算や漢字について問題を作成して調べた。各クラスの結果を学年の研究担当が集計、得点分布をグラフにしたところ、計算では、4年生以降に正答率が低い層が増え始めていることがわかった。特に5、6年生では、4年の問題から正答率の高い層と低い層とに分かれる「M字型」の傾向がみられた。予想していたとはいえ、これほどつまずきを抱えている子が多いことに、教員の間からは驚きの声が出た。

 図書先生は担任だった4年生のクラスで行っていた百ます計算などの授業を公開し、校内研修会で講師を務めて基礎計算を高める必要性を訴えた。それぞれの学級で補充指導を行ったものの、10月に行った2回目の実態調査では得点分布に改善は見られなかった。

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