特集 「学びに向かう」生徒をどう育てるか?

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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保護者が子どもの学びにかかわるための環境づくり

 小鹿野中学校ではこれまで、授業や指導の質を向上させることで、生徒の学習意欲と学力の向上を図ってきた。「単元学習カード」や「ステップアップテスト」など、一連の取り組みは効果を上げている。しかし一方で、教師は「もう一つ突き崩せない壁」を感じている。
  生徒が能動的な学習姿勢を身につけるには、学校で過ごす時間と同じくらいか、またはそれ以上に、家庭での過ごし方が鍵を握る。学校だけで学習意欲を向上させるのは限界がある。そこで、浦島校長が小鹿野中学校に赴任してきた06年度に、家庭と連携して生徒の学習を支援していく体制づくりを明確に打ち出した。
  例えば、06年度初めの学校説明会では、保護者に「平成18年度各教科の学び方・鹿中生徒への学習案内」(図6)という冊子を配付した。小鹿野中学校では、各教科の最初の1時間を使って、生徒に対して「教科の学び方」を指導している。また、学年会や全校集会の場でも繰り返し「学び方」を生徒に話している。こうした生徒向けのオリエンテーションの内容を、保護者にも読んでもらうことを念頭に冊子にまとめたのだ。ここには、各教科の学習の狙いや内容だけでなく、「授業中のノートは板書にないことでも書く」といった具体的な学習の仕方が書き込まれている。
  「中学では学習内容が難しくなり、保護者は子どもに勉強を教えにくくなるものです。しかし、学習内容はわからなくても、学習の仕方なら、『黒板に書いてあることをノートに写しているだけではだめ』というように、保護者も子どもの学習にかかわれます。保護者と学校が一緒に子どもの学力を育むためのガイドブックを作成したかったのです」(浦島校長)
  夏から秋にかけては「地区別出前学校説明会」を開催した。校区を五つに分け、教師全員が地域の公会堂に出かけ、学校の取り組みを保護者に紹介したのだ。前半は学校からの説明に費やされるが、後半は教師と保護者が車座でざっくばらんに話す。学校の教育方針に対する質問から、「うちの子が勉強しなくて困っている」といった日常的な悩みまで、話の内容はさまざまだ。
  「保護者からは、『学校で開かれる保護者会ではかしこまって言えないことが、出前説明会だと本音で話せて嬉しい』と好評です。回数を重ねるごとに口コミで評判が広がり、出席率も上がってきました。私たちにとっても、保護者の学校への要望や抱えている悩みがわかる大切な場となっています。07年度以降はさらに充実を図っていきます」(浦島校長)
  家庭と一緒になって子どもを育てる体制が構築できたとき、「すすんで学び、自らを磨き鍛える生徒の育成」は一歩前進するはずだ。
  「家庭との連携は、まだ着手したばかり。ですから本当の意味での成果が出るのはこれからだと思っています」(吉岡先生)

▼図6 「平成18年度各教科の学び方
         鹿中生徒への学習案内」の例(抜粋)
図6

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