特集 つながる「保護者」と「学校」
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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希薄化した保護者同士のつながりを再生する

 こうした保護者のわがままな要求をすべて受け入れるのは現実的ではありませんし、先生方は親のカウンセラーではありませんから無理があります。では、学校はどう対応すべきでしょうか。
 まずは、希薄化した保護者同士のつながりを再生する取り組みが望ましいと思います。そのためには、学校が場所を提供し、保護者同士が顔を合わせる機会を増やすことが必要です。ただ、PTA総会や保護者会では保護者同士の自由な会話は生まれにくいですから、そのときに使っていない教室を開放し、オープンスペースとして自由に利用できるようにするなど、インフォーマルなつながりが生まれやすい仕組みを取り入れるとよいでしょう。
 また、授業の支援者として保護者を学校に積極的に呼び込むのも効果的です。例えば、家庭科の授業に数人の母親に入ってもらえば、授業が効率的に進められる上に、母親同士の付き合いが生まれます。
 これらの方法で横のつながりが生まれれば、保護者が一人で抱えていた問題が皆で共有されるようになります。問題が起きてもすぐに学校に抗議せず、まずは保護者同士で話すというワンクッションが入るようになるのです。
 保護者から学校に対して「夜9時に学校指定の制服販売店に行ったら閉まっていた」との苦情が寄せられたという話を聞いたことがあります。このケースでも、事前に別の保護者と話していれば、「8時までは開いているわよ」という一言で済むことです。教師の配ったプリントがわかりにくかった場合でも、ほかの保護者と「どういうこと?」と話して解決してしまうかもしれません。
 保護者同士の情報交換は、学校の発信する情報に、当事者意識を補完してくれる面があります。例えば、交通安全の当番をお願いするにしても、プリントで伝えるだけでは「面倒だ」と感じる保護者が多いでしょう。しかし、保護者同士の会話で「あの交差点でAさんの子どもが事故に遭いそうになった」と聞けば、自分の子どもが心配で対応してくれる人が増えるのではないでしょうか。不審者対策のパトロールなども、同じことがいえます。
 一部の保護者が給食費を未納にしている問題でも、その保護者がほかの保護者と仲良くなれば、「自分だけ払わないのはまずい」と思うようになるはずです。


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