ノースカロライナ州のアパラチアン州立大学では、手厚い１年次教育に加え、高校生向けのプログラムにも学生が関わっている。ユニークなのが、「ギアー・アップ・プログラム」「アップワード・バウンド・プログラム」という２種類のサービスだ。
　ギアー・アップ・プログラムは、アパラチアン州立大学周辺の学校に通う中高生を対象に、早期から進学意欲を持たせ、大学進学に向けた動機付けをする支援プログラム。大学の初歩数学などの授業に高校生を参加させ、大学生活を擬似体験させることが主な内容である。このプログラムを通じて高校生からの進路に関する相談にも対応、学生が学習や日常生活についてアドバイスする。これによって、参加した高校生がアパラチアン州立大学に親近感を抱き、入学するという効果が期待できるわけだ。
　アップワード・バウンド・プログラムは、大学進学に不利なマイノリティ学生や、家族の中で初めて大学進学を目指す「第一世代学生」を対象とした進学準備支援プログラムである。アメリカでは、父母やそれ以前の世代を通じて誰も大学に進学したことのない家庭で育った学生は、大学入学後の適応が難しいといわれる。中退者が多くリテンション率が低い。
　地元志向が根強く多くの若者が地元の大学を目指す南部では、親の世代が大学卒である割合は低い。多くの州立大学は、地元で多くの学生を確保するため、州外出身者より州内出身者の学費を安く設定している。南部諸州の州立大学では、このような学費戦略に加え、第一世代を支援することが、地元での重要なマーケット戦略として定着している。親から大学に関する情報を得る機会が少ないこれらの高校生に対して、積極的に情報を提供してフォローするわけだ。
　アパラチアン州立大学のギアー・アップ・プログラムもこのような発想で展開され、学生が、プログラム参加者が通う高校できめ細かな学習支援をする。進路や大学生活に関する疑問に答えたり、友人のつくり方についてアドバイスしたりするなど、様々な事柄についてメンターを務める。