名古屋大学にはもう一つ、学生が主体となっている就職活動支援がある。内定を得た学生が、他の学生の相談に乗る「就活サポーター」と呼ばれる制度だ。船津氏の発案で、02年度からスタートした。就職相談を利用した学生やＯｎｎの学生らがサポーターとして登録。約40人が、10月〜２月の５カ月間、平日の午後１時から５時まで、２人ずつ２時間交代で就職支援室に常駐する。
　多数の学生に向けたＯｎｎのイベントとは異なり、就活サポーターは学生と一対一で面談する点がポイントだ。効果を上げるため、センターではサポーター向けにカウンセリングの初歩的な研修をする。
　企業選びのポイントや面接での心構えなど、就職活動全般についてのアドバイスをサポーターが担当。対応が難しい相談については、センターの相談員に引き継ぐ。「就活サポーターが相談の第一ステップを担ってくれるようになったことで、相談員は深刻な相談に時間を割けるようになった。一人ひとりとじっくり話し込むことができ、的確なアドバイスができる」と、船津氏はメリットを語る。
　サポーターは、03年度に延べ250人、04年度は１月末時点で300人の相談に対応した。「最後は笑顔で帰ってもらうこと」を基本姿勢とし、相手の話をじっくり聞いた上で、自らの体験を交えてアドバイスをする。「内定者のリアルな就職活動体験を聞くことができ、ノウハウ本では得られない貴重なアドバイスをもらった。来年、内定が出たら自分も後輩のために役立つことをしたい」という声が、相談者から寄せられているという。
　Ｏｎｎと就活サポーターは、完全なボランティアである。二つの活動に関わったある学生は、「いろいろと話をする中で、後輩から頼りにされていると感じ、相談に来た人から逆に応援されているような気持ちになった」と話し、そのことが活動を続ける原動力となっているようだ。「就職が決まった学生が相談に応じることで、自分の就職活動を振り返り、これから始まる社会人としての目標を再確認してくれればいい。それが、内定者自身のモチベーション維持につながる」と、船津氏は話す。
　これらの活動に参加した学生は卒業後の結び付きが強く、メーリングリストなどを通して大学とも密接な関係を保っている。就職支援室の一柳明室長は、「大学が卒業生をセミナーの講師として呼ぶときに、声をかければすぐに集まるような体制に発展させたい」と期待する。