教員はすべて「文学学術院」に所属

　早稲田大学の第一文学部・第二文学部は、学生数約8000人、専任教員200人近くという、早稲田大学で最大規模の学部だ。２学部ではこれまでも様々な改革が進められてきた。第一文学部は03年度に哲学科、文学科、史学科の３学科を廃止し、総合人文学科のみの１学科19専修制となった。もともと学科がない第二文学部は96年度に、８専修を整理統合して思想・宗教系、文学・言語系、表現・芸術系などの５専修となった。
　これら二つの文学部が今、大きく変わろうとしている。07年度に文化構想学部と文学部に再編されることになったのである。文学部には、第一文学部にある19専修のうち、人文専修と文芸専修を除いた17専修を移行させる予定だ。一方、文化構想学部は、第二文学部と第一文学部の一部で展開してきた学際分野を軸に、文芸創作指導などをさらに充実させ再編する。
　文化構想学部の学科は文化構想学科のみで、その中に多元文化論系、複合文化論系、表象・メディア論系、文芸・ジャーナリズム論系、現代人間論系、社会構築論系の六つの「論系」を設置。２年次に上がる時、論系に「進級」する。定員は論系ごとに設ける。
　一方、“新生”文学部では、これまで第一・第二文学部が蓄積してきた伝統的な学問分野の研究を継承、一層の発展を目指す。学科は文学科だけで、専修から移行した17コースを設ける。２年次からコースに所属するが、こちらもコースごとの定員を設ける。
　両学部の教員の所属は、学部や大学院ではなく、両学部設置に先駆けて04年度にできた「文学学術院」になる。人事に関する決定やカリキュラムの編成もここで行われる。文学学術院長の土田健次郎教授は、「学生のニーズの変化に合わせて、柔軟にカリキュラムや教員配置を変えることができるのが最大のメリット」という。

専門教育は演習・ゼミが柱に

　文化構想学部、文学部とも演習が専門教育の柱で、２年次から４年次まで必修または選択必修として履修する。研究に必要なスキルや知識を身に付ける授業で、各演習は半期で完結する。
　文化構想学部では、各論系に「プログラム」と呼ぶゼミや演習群を設ける。学生は主に自分の所属する論系のプログラムの中から複数の演習を選択。関心があれば、他の論系のプログラムからも自由に選択できる。３年次から４年次にかけてゼミに所属し、演習と並行して卒業研究に取り組む。ゼミは正課科目として設定し、演習と同じ教員のゼミに入ってもいいし、違うゼミも選べる。このように演習とゼミの両方を学ぶことによって、自分の関心の高い分野を広く、深く研究できるし、教員との緊密な関係も構築できるわけだ。文化構想学部のプログラムは固定させず、学生のニーズやその分野の研究動向に合わせて柔軟に見直すことにしている。「常に最新の動きを見ながら、新しいプログラムを作り出していくことが重要。受講者が極端に少なかったり、時代の流れにそぐわなくなったプログラムは廃止する」と、土田教授は話す。
　一方、文学部では、17コースのそれぞれに、５〜17科目設定される専門演習を履修する。「所属コースの演習を中心に履修することになるだろう」と、土田教授は言う。

２学部共通のブリッジ科目を開設

　２学部共通の講義科目として、「ブリッジ科目」を開講、１年次から履修させる。学生は興味のあるものを自由に選べる。「これまで第一文学部と第二文学部それぞれに設置されていた講義科目がすべてブリッジ科目として開講されるため、その数は700を超える膨大な数になる。学びの幅は相当広がるだろう」と、土田教授は言う。ただし、文学部では特定分野の専門性を高める上で、コースによって科目がある程度指定されることになる。
　ブリッジ科目の選択の自由度を高くする一方で、論系やコースで学ぶための学習スキルを確実に身に付けさせるため、１年次の導入教育は必修で行われる。「基礎演習や基礎講義で文献の検索法や論文の書き方をしっかり身に付けさせる。コミュニケーションツールとなる語学の教育にも力を入れ、２学部とも英語に加えて、もう１カ国語をみっちり学習させる」（土田教授）。