特集 「地域」という教科書

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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地域が無関心だったのは大学と文部科学省の責任

―大学が地域に出ることで、どんな効果が生まれるのでしょうか。

北川 一つは、学生の教育効果でしょう。現在、早稲田大学大学院で「公共経営」を担当していますが、授業だけではどうしても伝えきれないものがあります。課外授業で現場に連れていくと、学生の理解は一挙に深まります。机上の空論ではない実践的な知識が身に付くのです。
 私は現在、ある地方自治体と連携して、議員が条例案を作る運動を展開しています。条例案作りは役所の仕事と思われがちですが、住民の代表である地方議員と一緒に考えています。その活動に学生も参加させています。地方議会が、自治体の長や地方行政委員会が決めたことの追認機関になってしまっている現状、縦割行政の問題点など、地方行政の課題を理解することができます。

―まさに地域が学生を育てているわけですね。しかし、これまで地域は大学に還元を求めるだけで、学生の教育には無関心だったのではないでしょうか。

北川 それは地域の問題ではなく、大学が地域に関心を持ってもらえる存在になりきれていなかったのだと思います。これまで大学は、監督官庁である文部科学省の方ばかりに目が向いていました。
 現在でも、大学の敷居が高いと感じる人が多いのは、大学がそのように仕向けてきたからだと思います。大学にそのような姿勢をとらせてきた文部科学省にも責任はあります。

―近年、文部科学省は地域連携を通して学生を教育するプログラムを、重点的に支援しています。

北川 非常にいいことだと思います。ほかにも、地域学を学ぶ学部学科の設置や経済産業省との連携によるインターンシップの推進など、ようやく良い方向に風が吹き始めた気がします。しかし、こういうことはもっと大胆かつ大規模に進めていくべきです。


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