特集 「地域」という教科書

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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大学のブランド力が向上

 四つのプロジェクトは、いずれもまだ本格的な実施段階にはない。最も進んでいるものでも、予算が措置されるのは06年度以降で、ほとんどのプロジェクトは、市民や行政、企業などとの意見交換会、事前調査が活動の中心だ。
 とはいえ、こうしたフィールドワークを通して学生は大きく成長するという。木本学長補佐によると、学生にとってのメリットは二つある。
 一点目は、学びへのモチベーションの向上だ。「現場に出れば、自分の知識の少なさを痛感する。自ら進んで学ぼうとする意識が芽生えるのが、最大の教育効果」というわけだ。異なる学部の学生と協働することで、視野も広がる。
 二点目は、人のつながりの大切さを実感することだという。各プロジェクトでは、利害関係のある人間関係の中に飛び込み、人とのつながりを構築しながら、物事を進めていくステップを学ぶ。木本学長補佐は、「最近の企業は、組織を横断して人材を集め、新しい事業を展開できるプロジェクトマネージャーを求める傾向にあるが、このプログラムはまさにそうした人材を育成している」と自負する。
 宝塚市と連携した「学生による『劇場空間・宝塚』の都市再生」プログラムは、大学にも大きなメリットをもたらす。学生と一緒に現場に出かけることで、教員には地域と結びついた研究の題材が増える可能性がある。特に、高度福祉や新産業創成のプロジェクトではその傾向が強い。学生がまちづくりの中心的な役割を果たしていることを地域の人たちに知ってもらうことで、大学のブランド力アップにもつながる。
 木本学長補佐は、「学生は決して“お客さま”ではない。大学が学生に場を与え、そのパワーを活用すればするほど、学生は成長する。プロジェクトに参加した学生の『これで授業料の元はとった』という言葉が、すべてを物語っている」と、プログラムの有効性を評価している。


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