この目標・計画・評価のサイクルの問題点について考えてみましょう。法人化準備のプロセスでは、各国立大学法人の自立性が強調されていました。「それなのに、なぜ、政府が大学の中期目標を示し、大臣が計画を認可する必要があるのか」という批判や疑問が出ました。
　しかし、各大学の中期目標・計画の中身について調べてみると、文科省の意向が直接反映されているとは思われず、ほとんどが大学側のイニシアチブで作成されたと考えてよさそうです。そのことは、中期目標・計画の修正がどのようになされたかをみることで推測できます。大学が作成した中期目標・計画の原案と文科省による修正箇所は、公表されています。それを見ると、修正は些細な部分がほとんどで、中期目標の提示の時点で政府による管理が強かったとは思われません。もし管理が強化されるとすれば、中期目標・計画の期間終了後に評価がなされ、それが次期予算配分に反映される時でしょう。
　大学側は、法人化したのだからもっと自由に教育研究や管理経営をしたいと考えるでしょう。しかし、大学の教育研究や経営に充てる事業費の半分は、運営費交付金という税金で賄われています。国民からすると、自分の納めた税金が本来の目的に合致した形で効率よく使われているか、知りたいところです。そのために目標・計画・評価のサイクルが導入され、政府による目標管理がなされるのだと解釈することができます。そう考えると、中期目標・計画の管理は、教育研究の活性化と業務運営の効率化、すなわち各大学の内部の効率化にはよくできた仕組みだといえます。
　しかし一方で、国立大学法人制度全体の効率化も必要です。例えば、人材育成の必要性が高まると予測される分野の教育や、重要な分野の研究を、どの大学も担わないという「見落とし」は生じていないか。逆に大学間で研究分野の重複や研究者の余剰はないか。人材や施設が十分でない大学に、特定の研究費が配分されていないか。高等教育の機会は、全国で平等に保障されているか。これら国立大学法人全体で考えなければいけない効率化、すなわちシステム効率は、どうしても見落とされがちです。国立大学法人評価委員会は、今年の春、この問題にようやく気付き、法人全体の状況の把握に努めるようです。