特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 8/32 前ページ  次ページ

若手の活躍の機会がないと学問は進歩しない

―今回なぜ、そのような難しい問題に踏み込んだのですか。

荻上 高等教育がグローバル化する中で、教員組織の国際的通用性を確保しないと競争力を高められないという危機感があります。助手を「アシスタント」と直訳すると、海外の大学では大学院生のリサーチアシスタントと誤解されてしまいます。そこで、各現場で「アシスタントプロフェッサー」と訳すなど実態に即した対応をしています。このような名称と実態のずれ、制度と実態のずれを正しておかないと、今後、様々な問題が出てきます。
 これまで個々の大学レベルでは、助手の待遇を改善したり一部を講師に格上げしたりということを進めてきました。私が学長を務めた都立大学をはじめ公立大学での例をいくつか知っていますが、いずれも設置者による正式な発令ではなく、学内発令での対応にとどまっています。個々の大学でできることには限界があり、制度を根本から見直す時期に来ているという判断が、文科省にもあったようです。

―確かに、助手という名称から抱くイメージと実態には、ずれがあります。

荻上 私の専門である数学は、助手の仕事が「補助的な業務」というイメージとかけ離れている分野の代表です。教授から助手まで一人ひとりが独立した研究者として位置付けられていますから。ひらめきがものをいう世界なので、若手が最先端の研究をしていて教授が話についていけないということもあります。助手にはなるべく雑用をさせず、研究に専念できる環境を整えるよう学科として配慮します。
 数学の世界では助手がかなり恵まれているといえますが、本来、学問とはそういうものではないでしょうか。若手にチャンスを与えて教授を超えるような研究をしてもらわないと、学問の進歩はあり得ません。
 ただ、数学の助手でも、今は授業を担当することはできません。今回の制度改正によって、教育の主体も担えるようになります。


  PAGE 8/32 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ