特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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導入機関は効果ありと評価教員で「評価する」は4割弱

 わが国では、いわゆる任期法の4条に規定された三つの型のいずれかの任期制が導入可能である。「流動型」は教育研究の活性化を目標にし、「研究助手型」は、助手の多様な職務のうち研究に特化して従事させるために導入される。最後の第三のタイプは、期間が限定される「プロジェクト型」である。調査では、流動型が全体の8割を占め、研究助手型は2割、プロジェクト型は若干であった。
 任期の期間は各大学の判断に任される。アメリカのサバティカルは、聖書の安息日にのっとって7年周期が多いが、日本では幅があり、国立では5年が57%を占める(図表2)。公立・私立では、労働基準法との関係もあり最長が5年。公立は5年と3年に分かれる。私立は3年が多く、1年も18%近くあった。国立では最高12年という例もみられる。

図表

 再任の可否も大学ごとに決められるが、再任なしという厳正な任期制は全体の15%にとどまる(図表3)。再任回数無制限というのが国立では75%近くを占める。再任を繰り返して定年まで雇用することもできるので、教授にも適用可能ということになる。

図表

 任期制に対する評価は、面白いことに、個人の立場、大学の設置形態、導入組織単位によって、大きく異なる。高等教育研究の専門家としていろいろな調査に従事したが、これほど複雑怪奇な結果が得られた経験はない。
 任期制を導入している機関レベルでは、制度が何らかの貢献をしているという回答が7割近くに上る(図表4)。

図表

 一方で、適用された教員で、任期制が教育研究の活性化に貢献していると評価する人は、「大いに」と「やや」を合わせても4割未満だった(図表5)。

図表

 機関側は、流動性と学問的生産性は相関するという「流動性仮説」に基づき、任期制が教育研究の活性化につながると判断しているようだ。教員側の評価は、任期制が処遇を不安定にするという「生活保証仮説」に基づくと考えられるが、任期制が処遇の劣悪化を招くものであってはいけない。私立大学では、経営的な観点のみで任期制が導入される危険性もあるが、それでは教育研究のためにならず、教員自身はもちろん学生にとっても不幸なことである。いずれにしても、教員の間で任期制の人気は必ずしも高くない。経済的な処遇、評価の妥当性と一貫性など、改善や工夫を図るべき点が多いようだ。
 任期制は、良くいえば多様で、悪くいえば付け焼き刃的な対応になっていて、各大学での運用は実に様々である。岐阜薬科大学のように、業績の評価に、論文が掲載されたジャーナルの引用頻度などの影響力を反映したインパクトファクターを導入し、その結果によって教員人事を行うなど、厳正な評価を試みるところもある。他方では、国立のある研究重点型大学の医歯薬系学部のように、10年の定期的評価に代用する目的で導入した例もある。


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