特集 ―学校教育法改正を入り口に―教員組織をどう活性化するか

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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国立は研究活性化を目的に任期制を導入

 97年に導入された任期制を巡っては、当時の文部省を中心とする政府内、政党、専門家集団、教員個人などの間で意見が対立した。意見の一致をみないまま、政府は、大学教員の流動性の切り札として、個別機関の主体的な意思決定を認める形で政策化に踏み切ったと理解される。良かれ悪しかれ、このような経緯が、現在もなおこの制度に影響を及ぼしている。
 筆者らはこれまで、任期制の動向と課題について様々な研究を実施してきた。ここで紹介するのは主に、03年度の4年制大学における任期制の導入実態、適用教員の意識、機関代表による評価などの調査である。調査対象は、01年度の文科省調査で任期制を導入していると答えた学部・研究科・センター等の機関で、国立142、公立22、私立169。回答を得られたのは、それぞれ51、9、45の機関だった。各機関長に依頼して2853人の任期制適用教員に配布した調査票は、450人から回収できた。
 調査結果の詳細は、『わが国の大学教員に関する人事政策II―任期制の導入・実施・再任の分析を中心に(COE研究シリーズ14)』(広島大学高等教育研究開発センター)等をご参照いただきたい。
 教員ポストに占める任期制適用率は、制度導入1年後の98年度段階では21大学99ポストに過ぎなかった。これが、00年度に98大学1322ポスト、01年度には154大学2913ポスト、02年度には205大学5321ポストと、幾何級数的に増加している。本務教員全体の数を15万人とすれば、02年度の適用率は3.5%で、前年度から倍増している。05年度には2万ポストを超えている可能性もある。
 任期制導入の動機付けに関する調査では、国立大学は研究にプライオリティを置く傾向が認められ、私立大学はどちらかといえば教育の方を重視しているようだ(図表1)。私立はトップの鶴の一声で決めるところが多く、導入前に学内で論議した形跡はあまりうかがえない。任期制の具体策は事務局が検討することが多いようである。

図表

 一方、国立では学部自治が強く、委員会やワーキンググループなど各組織の教員主体で物事が決まるため、過剰な論議がなされる場合もある。講座やセンターなど、小さな組織単位で任期制を導入するケースが多いが、一方で、研究科全体で導入する例もある。


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